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復興取材レポート

【語り部が本当に語りたいこと】 南三陸町観光協会 まちあるき語り部

2015年から、南三陸の「今」を歩いて感じる「まちあるき語り部」を実施している南三陸町観光協会。今回は、自らもガイドを務める及川和人さんに、お話を伺いしました。

なるべく客観的に、震災のことを伝えていく。
チリ地震津波をはじめとする過去の被災経験から、災害に強いまちづくりを進めてきた南三陸町。しかし東日本大震災では多くの尊い人命が失われ、街並みは一変。その被害の大きさは、新聞やテレビでも頻繁に報道されてきました。

その南三陸町で、2015年からスタートしたのが、南三陸町観光協会による「まちあるき語り部」です。当時、視察に訪れる団体向けの語り部プログラムは実施していたものの、個人向けのものは用意されていませんでした。それでも個人で南三陸町を訪れる人から、「語り部の方のお話を聞きたい」「現地を案内してほしい」という要望が多かったそうです。そこで団体向けのプログラムが少し落ち着いてきたタイミングで、個人向けのプログラムとして「まちあるき語り部」をスタート。団体向けのプログラムの申し込みは年々右肩下がりに減少する一方、「まちあるき語り部」の予約は増えているそうです。

「まちあるき語り部」は、名前の通り、ガイドとともに町内のコースを約1時間歩いてまわるプログラム。観光協会の若手スタッフを中心に、地域のガイドさんにも協力してもらいながら、10名程のスタッフで運営しています。
「1名から申し込める個人向けのプログラムなので、質問もしやすく、じっくりと話を聞くことができます。例えば“もう少しこういう分野の話が聞きたい”というご要望にお応えできるのも、個人向けプログラムの良いところですね」と及川さん。

まちあるきのコースは、高台から志津川湾を眺める「高台コース」や、防災対策庁舎の間近まで行く「中心部コース」など様々。新規ルートの開拓にも取り組んでいます。また、新しい道路ができ、刻々と街並みが変わる中、言葉だけで被害状況を伝えるのは難しいので、震災前、直後、そして復興の様子を写真で見せながら、なるべく客観的にまちの状況を伝えるように心掛けていると言います。「プログラムに参加する方の目的はそれぞれですが、まずはあの日起こったこと、復興の過程、今のまちの状況、これからの計画を客観的に届ける必要があると思っています。その上で、もう少し個人的な想いを聞きたいというご要望があれば自分自身の話をすることもありますが、それがまち全体の町民感情として捉えられないように、スタッフ間でガイドの訓練をしながら進めています」。

大変だったし、苦しかったけど、それだけじゃない。
スタート当初から一貫しているのは、「まちあるき語り部」を通して感じたことや考えたことを、家族や会社、地域に持ち帰ってもらい、何かあったときに役立ててもらいたいという想い。各地で様々な自然災害が起きているので、地震・津波だけでなく、自然災害という枠で捉えて話を聞いてもらえれば…と及川さんは話します。また、観光協会が実施する語り部プログラムという側面も意識しているそう。「大変だった、苦しかった、だけではなく、例えば“ここの川には鮭が帰ってくるんだよ”とか、“今の旬はメカブだよ”とか、まちの魅力も含めて伝えていきたいと思っています」。

「まちあるき語り部」がスタートして4年。語り部を担当するスタッフにも変化があったと言います。「まちのことを知り客観的に伝えること、自分の想いを整理して話すことがしっかりできるようになってきたように思えます。また、地域でお願いしているガイドさんの中には、語り部で話すことで救われたという人もいます。はじめはつらい気持ちで話していたけど、共感してもらったり、価値を感じてもらえることが、語り部を続ける原動力になっているようです」。

今後は徒歩だけでなく、クロスバイクでまちを巡るコースも企画中とのこと。まちや心の復興とともに、「まちあるき語り部」も発展しながら続いていきます。

 

南三陸町観光協会 まちあるき語り部
https://www.m-kankou.jp/