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復興取材レポート

【宮城発!元気と食の最新情報】多賀城、米農家の七代目が食材王国みやぎの新たな名物づくりに挑戦!「百年農家の美人あまざけ」

東日本大震災では、市街地の南側一帯の工場地帯が津波による大きな被害を受け、市域全体の約33%が水没してしまった多賀城市。多くの企業が移転を余儀なくされるなど大きな打撃を受けました。

2015年の7月、市街地の活気を取り戻す方策として多賀城市は、市内の飲食店や企業と共同で特産品を活用した新たなグルメブランドの開発に着手します。

白羽の矢が立ったのは、1300年の古い歴史を持つ、日本でも有数の史跡の郷ならではの特産品である古代米でした。

多賀城市で生産されている古代米は紫黒米です。多賀城の紫黒米には歴史的根拠があり、国府多賀城跡から出土した木簡には、「黒舂米(こくしょうまい)」と墨書きされていたことから、当時から黒い米を作付けしていたと考えられています。この取り組みから誕生した、新たな多賀城のグルメブランドは「しろのむらさき」と名付けられました。

そして昨年末、この「多賀城古代米」をはじめ、多賀城で生産されている「ササニシキ」や「いのちの壱」を使用した「百年農家の美人あまざけ」が誕生しました。

この商品のポイントは、ありそうでなかった“農家が手がけた”甘酒であるという事。全ての原料は自社生産米。お米と麹だけで作られた全国的にも珍しい甘酒なのです。

「百年農家の美人あまざけ いのちの壱100%」(写真 左)は、国内希少品種「いのちの壱」を使用。優しい香りとまったりとした甘味で、飴のようなコクが広がる別格の甘酒です。

この甘酒を製造販売している加藤 真崇さんは、史都・多賀城市で米づくり一筋140年の農家の7代目。多賀城味噌製造所「みそらの郷(さと)」を運営し、多賀城味噌や古代米(紫黒米)の生産に取り組み、米や野菜の栽培と味噌づくりを行いながら、多賀城ブランドの農産物を全国へと発信しています。

加藤さんは、震災の年(当時29才)に多賀城に戻り、家業を継ぎました。古代米の田んぼは、先代のお父様が他の方から引き継いだもので、10アール(約1反)程度の規模から開始したそうです。

加藤さんが50,000㎡の田んぼに、三陸の牡蠣殻を敷いて手塩にかけて育てる米は、宮城の「ササニシキ」はもちろん、国内希少種である「いのちの壱」、そして先代から受け継いだ「多賀城古代米」をはじめ9銘柄を生産しています。

「みそらの郷(さと)」では、明治23年から自家栽培米を糀付けして味噌を造り、その糀米を家人が甘酒にして来客に振る舞い、旨いと悦ばれていたそうです。今回の甘酒の商品開発は、この逸話を現代に新たな形で登場させるプロジェクトとしてスタートしていきました。

「家業に戻って3年目くらいから、直販で古代米100kg程度の小売が可能になり、古代米の生産に面白さを感じるようになりました。古代米の特産品化を推し進めるため、古代米の作付け範囲も1ヘクタールに拡大しました。

古代米は、ミネラルやビタミンを豊富に含み、グルテンフリーであることから、美容や健康に適した食材として近年は女性を中心に人気です。多賀城の古代米の認知度は、ここ2~3年で飛躍的に伸びており、原料を使って商品化してくれている方々の意見を聞きながら、より良い商品を作るため試行錯誤を続けているところです。

さらに古代米は食用だけでなく、その豊かな発色を活かして田んぼアート等の観賞用にも用いることができるのも魅力です。七ヶ浜町のカフェ「SEA SAW」では、色付きの稲ワラを使ったリース作りなどのワークショップを企画しており、こうした食以外の展開を目指す試みにも大賛成なので積極的に協力していきたいです。」と加藤さんは古代米の魅力を語ってくれました。

テストマーケティングの機会となった、昨年末の伊達美味マーケットでは、3種の甘酒の評判は上々で、3月の本格発売を前に大きな弾みとなりました。

加藤さんは多賀城市の農家では最年少となる36歳です。だからこそ、この先に訪れる課題にも目を向けています。

「多賀城市は約15%の面積が田んぼです。高齢農家の引退後、耕作放棄地になったら大変ですが、儲からないのであれば、若い世代に農業を勧める訳にもいきません。付加価値を高めた農産物を直販するなど、利幅が大きくなるような仕組みを、農家自らが率先して作ってゆく事で、次世代が農業に対して希望を持てる環境を整えていきたいです。

量と値段の競争ではなく、古代米のように何か別の特色を持った商品で成功事例を作る事で、若い世代の見本になれるような姿を見せていきたい。日本で売れなければ、海外に売るなどのチャレンジをしたいと考えています。

市をあげて古代米を特産品としてバックアップしてくれる今の状況は、恵まれていると思います。だからこそ、後に続く世代のためにも、この機運に乗せていきたいですね!」

 

多賀城味噌醸造所 みそらの郷
022-368-7312
宮城県多賀城市高橋5丁目15-10
営業時間:午前10時~午後5時
定休日/毎週水曜日

 

 

執筆者PROFILE
一般社団法人IKI ZEN 佐藤大樹