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宮城県
復興取材レポート

続けるパワーと生み出す活力。葛岡碧さんと女川の力を感じる旅。

こだわりのフォルムが雇用と夢を生む

雨上がり。海の香りと湿気を含んだ風が髪を揺らします。女川町は土地のかさ上げ工事が進み、少しずつ将来の町の姿が見えてきました。昨年は、まだ頼りなかった女川駅前の街路樹も、しっかりと根をはり、青々と茂っています。

この町を歩いたのは、仙台市出身でファッションモデルの葛岡碧さん。震災直後から取り組みを始め、今は名物のひとつになった木材加工品「onagawa fish」の工房を訪れました。はじめて「onagawa fish」を手に取った葛岡さんは「まるで木じゃないみたい!」とほれぼれ。木片を削って形を作る作業を見ると「ただの木が!すごい!」と歓声を上げました。

onagawa fishの仕上げを担当する地元のお母さん。つるつるに仕上げる技に感嘆の声が。

 

onagawa fish 木製キーホルダーで、防犯や災害時のアイテムとしても使えるホイッスル付きなどの商品も。

代表の湯浅輝樹さんは、やすりで仕上げる工程を解説しながら「視察に来た木工職人に『ここまでしなくても』と言われたこともあるんです」と誇らしげ。

震災の年から作り始めた「onagawa fish」は地元の方を雇用し続け、最高で月3000本を売り上げたこともあるそう。おもちゃやコラボ商品もどんどん生まれています。「いいものを作ろうという気持ちがあったから、6年もの間、人気であり続けるんですね」と葛岡さん。

もっと町を見てみたいというリクエストに、湯浅さんは「女川町地域医療センター」に案内してくれました。

大切なのは 手の届くところから

高さ10数メートルもの津波は、高台にあるこの病院の1階部分まで及びました。「震災当時は東京にいたので…。テレビで見ていた風景がここだったんだと思うと…」。葛岡さんは言葉を詰まらせます。「宮城県がひどい状況でショックでしたが、雑誌の撮影はいつも通りあるんです。帰省もままならない中、どう支援したらいいんだろう、と悩みました」。

葛岡さんの結論は、「自分の手が届く範囲で」ということ。被災地の友人に物資を託したり、つながりのある人に寄付をしたり。「何がベストなのかは、今でも分かりません。でも、できるところから始めることは、時間がたった今でも、変わらないと思います」。

旅の締めくくりは、昨年オープンした観光物産施設「ハマテラス」。威勢のいい声を上げる鮮魚店をのぞき込み「すごいパワー!」と笑顔を見せます。

三陸石鹸工房KURIYA ハマテラスの一角に店を構える。アロマとして使えるかわいらしい石鹸がたくさん。

「湯浅さんの話を聞いても驚いたのですが、被災したところから、ここまでやり遂げる力が本当にすごい。私もモデルとしてつくり上げる仕事をしているので、形にするまでがどんなに大変か少しは分かります。このパワーは、ここに来なければ感じられなかった。私も、こんな人間になりたいな、と思いました」。(沼田佐和子)

 

葛岡 碧
仙台市出身。女性誌「Ray」、「AneCan」の専属モデルとして表紙を飾るなど、若い女性に支持を得る人気モデル。現在は、雑誌「CLASSY」「Domani」等に出演する他、CMやテレビにも活動の幅を広げている。震災後はチャリティのファッションショーなどに参加し、義援金を募った。