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宮城県
復興取材レポート

想像して創造できる場所。石巻の「循環」を小林武史さんとともに感じる。

「はまさいさい」で浜のお母さんたちとともに。

放り出されたままの自然の中に、アート。
長く続いた梅雨の終わり。雨の音を聞きながら、小林武史さんに会うために石巻市・牡鹿半島に向かいました。小林さんは今「Reborn-Art Festival」の実行委員長として、数か月間、石巻と東京を行き来しています。

「アート」と「音楽」、「食」をテーマに掲げた総合祭「Reborn-Art Festival」。石巻市中心部と牡鹿半島をメイン会場に、平成29年7月22日〜9月10日までの51日間、開催されます。

小林さんが震災後初めて石巻市に訪れたのは平成23年3月19日。多くの生と死を目の当たりにして、ここからどうやったら未来につながる循環を生み出せるか考えたと言います。

「東京にいると忘れてしまいますが、ぼくらは、生まれて生きて死ぬという循環の中にいる。そういう当たり前のことに、ここで改めて気が付きました。生きることの捉えなおしが必要なんじゃないかと」。

その中で生まれたのが「Reborn-Art Festival」です。

Reborn-Art Festivalは、市民や全国のボランティア「こじか隊」に支えられています。

「『Reborn』には生きる、『Art』には技という意味を込めました。石巻市は、いろんなことを『想像』し『創造』できる場。これは、都市部だと難しい。たくさんのものを失った場所だからこそ、予測できないものに出会える場になったのではと感じています」。

石巻に巨大なマユとキノコが出現
増田セバスチャン作のツリーハウス。ブランコに乗って、海を眺められます。

投げ捨てられた「自然」失せたものを入れるドーム
岩井優の作品。海岸や山の廃棄物を利用した作品。イベント期間中も継続して変わり続けます。

「予測できない出会い」は今回の大切なテーマ。アート作品は、普段行かない場所に展示されているものも多くあります。コンセプトアートである「White Deer (Oshika)」も、港を抜け、里山を歩いた先にある浜にあります。「ここには、手つかずで放りだされたままの自然が残っています。海と里山、両方に出会ってほしい」。

隆盛と衰退、両方を感じるまち。 
「White Deer (Oshika)」の足元には、全国各地のシェフらが腕をふるうレストランをオープン。浜の女性が郷土料理をふるまう「はまさいさい」も営業を始めています。

はまさいさい 新鮮な魚や野菜をつかった郷土料理を日替わりで

「朝ね、漁師さんが持ってきたエイを天ぷらにしたのよ。あと鮭。食べてって!」。

「はまさいさい」では、お母さんたちが矢継ぎ早に料理をすすめてくれます。「そうそう、今、鮭がおいしいんだよね」と小林さんは舌鼓。

「浜のお母さんも漁師の人も、手伝おうかって来てくれる。この食堂を自分ごととして頑張ってくれるのがいいですね」。

現在の石巻市は「どっちつかずなところが、すごくいい」と小林さん。

「出ていく人も、入ってくる人もいて、隆盛と衰退、両方見えますよね。今、東京は、中身を失ったまま経済だけがすごい勢いで回っている。それに比べて、石巻は息づかいが楽なんです。食も文化も素晴らしい。ライブをすると、いい即興がどんどんあふれてくるんです。アートや食を入口に、石巻市の魅力と再生を感じにきてほしいと思います」。文責・沼田佐和子

小林 武史(こばやしたけし)
音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.Childrenをはじめ、日本を代表する数多くのアーティストのプロデュースを手がける。平成15年に自然エネルギー推進を掲げた「ap bank」を設立。東日本大震災後は被災地に赴き、炊き出しやボランティアの受け入れ体制の構築などに尽力。支援だけに留まらない幅広い活動を行っている。