みやぎ復興情報ポータルサイト
宮城県
復興取材レポート

大好きな松島のために、できることを。むとう屋 佐々木 憲作さん


日本三景のひとつとして、日本全国はもとより、世界中からも多くの観光客が訪れる松島。ここで、こだわりの日本酒を販売する人気の酒店が創業70年になる「むとう屋」です。

「むとう屋」の若旦那として、元気いっぱいに店を切り盛りしている佐々木憲作さんは、震災をきっかけに”街づくり”について深く考えるようになったといいます。そして、松島に暮らし、松島を愛する人たちと一緒に「松島流灯会 海の盆」を企画。手作りの、どこかノスタルジックな雰囲気の祭りには、地元の人たちを中心に多くの人たちが集まります。

「まず、自分たちが行動しないと」。佐々木さんは、大好きな松島のために、これからも走り続けます。

凹んでる場合じゃない。 待っててくれる人の ところに行かなくちゃ。

平成23年3月11日。東日本大震災が起こったその日、佐々木さんは仙台市内の飲食店にお酒を納めていたそうです。

「とりあえず車で帰ろうとしましたが、信号が止まっていたせいで全然車が動かなくて。7時間かけて松島に帰り、その日はとりあえず避難所に向かいました」。

翌朝、店に向かった佐々木さんが目にしたものは、水に浸かり、めちゃくちゃになった店内。

「もう、どうしよう…としか言えない状況で、何から手を付けたらいいかわかりませんでした。商売も再開できるのかどうかもわからなくて…。でも、そんなある日、あるホテルの支配人に言われたんです。『むとう屋さんが動いてくれなかったら、うちはどこからお酒を仕入れたらいいの?』って。それで目が覚めた感じになりました。凹んでる場合じゃない、お客さんのところに届けなくちゃ、って」。

佐々木さんは、がむしゃらに走り、お酒を集めてお客さんのところへ届けて回りました。 震災を経て、改めて松島という場所で商売をし、生きていくことを意識した佐々木さん。

創業70年の「むとう屋」。松島五大堂の向かいに佇む。

「そんなとき、松華堂(菓子店)の伸ちゃん(千葉伸一さん)から声をかけてもらって、夏まつりの実行委員の仲間に入れてもらったんです」。

それまで15万人もの観光客を集めていた「松島灯籠流し花火大会」の中止が決定され、松島で暮らし、ここを愛する人たちが「今の自分たちにできることを」と立ち上がったのです。

「まず、自分たちが好きになれるお祭りにしたい、というのが根底にありました。人を大勢呼ぶのではなく、地元の人たちが楽しめるもの。そして、東京とかで働いてて、里帰りした人たちが”あ、これが松島だよね”っていえる環境づくりがしたかったんです」。

こうして始まったのが、「松島流灯会 海の盆」でした。海岸広場に櫓を組んで盆踊りを踊ったり、太鼓が鳴り響いたり。まわりでは昔懐かしい縁日が並び、金魚すくいや射的に興じる大人と子どもの笑い声が響いたり…。懐かしくて、優しい夏祭りは、大成功となりました。

「地元の高校生が灯籠づくりを手伝ってくれたり、ダンス部がパフォーマンスしてくれたり、地元の人たちの手づくりだからこそ、”すごくいい”って言ってくださる方が多かったんだと思います」。

平成23年「松島流灯会 海の盆」の様子。画像提供:(一社)松島観光協会

そして、佐々木さんは言います。「松島って、やはり日本三景というところに胡坐をかいてきたようなところもあると思うんです。でも、これからはそんなのは通用しない。商売は商品よりも人だと思っているんです。それって、地域にもあてはまるな、と思って。松島も”あの人がいるから行こう”って思われる場所になったら最高ですよね」。
風光明媚な景色だけでなく、地元を思うアツい人たちがいる場所。それが松島なのです。

「酒屋だけど子どもにも来てもらいたい」と、オリジナルサイダーも展開。

むとう屋 佐々木  憲作さん

1979年松島町生まれ。仙台市内の飲料メーカーに勤めた後、30歳で祖父が創業した「むとう屋」の若旦那に。松島の風土とともに酒を楽しんでもらいたいと、さまざまなイベントを企画している。