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宮城県
復興取材レポート

パンダライオンとめぐる岩沼・亘理、食の旅。やっぱり宮城ってすごい!

「にしき食品」にて、広報の齋藤幸治さんと。

全国に広がる岩沼発レトルトカレー。

「東日本大震災が起きたのは、自分がまだ売れないラップグループをやっていた時。もう、音楽なんていつできるか分かんないなぁ…と思いながらガソリンの列に並んでいた時、ラジオからアンパンマンの歌が流れてきたんです。グサグサ心に刺さって、涙が止まらなかった。あの時、ああ、人の心に刺さる音楽がやりたいなと思ったんです」。

今回、岩沼市と亘理町を一緒に回ったのは、音楽グループ「パンダライオン」の4人。
宮城県出身のMOZさんは、震災当時のことを振り返ってこう話してくれました。

パンダライオンのメンバーは全員が東北出身。
宮城県を拠点に、想いがこもった音楽を発信し続けています。

この日まず訪れたのは、岩沼市の「にしき食品」。
こだわりのレトルトカレー専門メーカーとして、今全国から注目を集めている会社です。

「三度の飯よりカレーが好きなんです!」「おれもだよ!」とはしゃぐMOZさんとKIMさん。

カレーの香りが漂う工場を広報の齋藤幸治さんが案内してくれました。
「レトルトって実はいいものなんだ!ということを発信したい。うちのカレーは、添加物不使用です。味も本物にこだわっていて、プライベートブランドのインドカレーをつくるために、毎年インドに行っています」。

ラボでは、新しいカレーを開発するために、約30種のスパイスが並べられていました。
メンバーの59さんは「こんなに使うんですか!こだわってますね」と目を丸くします。

「にしき食品」ラボ。試作品の開発は、栄養士のほか元インド料理店のシェフなどが行っているそう。蔵王でとれた地元のスパイスも使用する。

にしき食品のレトルトカレーは、スーパーでよく目にするレトルト食品より値段が高めです。
それでも、おいしくて安全な料理を手軽に食べたいという時代のニーズにマッチし、売り上げを伸ばしています。

「震災で、工場は約1メートル浸水しました。けれど、当時の社長の早い判断で震災の翌週には工場再開に向けて動き始めることができました。少し遅かったら、資材不足で工場を再建するのにもっと時間がかかったでしょう。震災後には工場の増設もしましたし、2020年には、見学ができる工場も完成する予定です」と齋藤さん。

KIMさんは「このたくましさがあるからこそ、宮城で生まれたカレーが日本全国に羽ばたいたんですね」と感心した様子。

最後に立ち寄ったプライベートブランド「にしきや」の売店では、4人とも我先にとカレーを購入していました。

「にしきや」売店。「試食させてもらったレモンカレーが最高においしかった」とMOZさん。

はらこめしへの誇りが現地再建の原動力に。

次に訪れたのは、亘理町の「あら浜」。
鮭とイクラを使った郷土料理「はらこめし」で有名なこの店は、津波で店舗が流失しました。

「ほんとは逃げる気なかったんだよ、店は命だから」と店主の塚部久芳さん。

避難先の学校で数日過ごし、店があった場所に戻った時目に入ったのは、瓦礫に覆われたまち。
そこに「あら浜」の看板がぽつんと残っていました。

「ここに戻れということなんだな、と。震災後はショックでもうろうとしていたんだけど、息子の協力もあって震災の半年後に仙台市内に看板を出せました。そしたら、すごい行列になったんだよ。涙が出ました」。

話の迫力にのまれたように聞き入る4人。

「あら浜」は震災から5年5カ月後に亘理で再建しました。

塚部さん親子と一緒に。新しい店を支えたのは家族の協力だった。

その年のはらこめしのシーズンは、「あら浜」を目指すお客さんの車で渋滞が起きるほどだったと言います。

「先人が磨き上げたはらこめしを、売り続けないといけない。今も、その一心です」。

亘理町の海の幸が1年中楽しめる人気メニューの「五季飯」。

「あら浜」にて。海鮮丼や天ぷらも盛りがいい。1月からは、ほっき飯がおいしいシーズン。

塚部さんの話を聞き、59さんがかみしめるように言いました。
「ぼくらも、ぼくらなりのはらこめしを、発信していかないといけないですね。ぼくは塚部さんから、はらこめしにかけるプライドを感じました。はらこめしが、被災地である亘理に人々を呼ぶフックになっている。はらこめしを発信することが、震災を風化させないことにつながってるんです」。

AIBAさんもうなづきます。
「にしき食品でも、あら浜でも、気持ちと行動力が復興につながってるんだと感じました。そういう行動力を、見習いたいですね」。

「宮城で生まれたものは、いいものばっかりだと、あらためて思いました」と話すのはKIMさん。
「米も野菜もおいしいでしょう。今日食べたカレーもあら浜の料理もうまかった。そういう『いいもの』の一部に、自分たちもなりたいです」。

「震災のあと、自分が生きている一日は、誰かが生きたかった一日なんだと身に染みて感じました」とMOZさんは言います。

「自分は宮城の空気と郷土に誇りを持っている。今日出会った人たちも、この場所じゃないと、という想いをすごく感じました。これからも、東北出身だという誇りを持って、ここから発信し続けたいですね」。
(文責・沼田佐和子)

 


パンダライオン
仙台を拠点に活動するグループ。左から青森県出身のKIM(キム)、59(ゴクウ)、宮城県出身のAIBA(アイバ)、MOZ(モズ)からなる。2018年は、DA PUMPの『U.S.A』をアレンジした栗原市のご当地ソング『I.N.K』が再生回数260万回を突破した。2019年2月9日、10日に結成5周年記念のワンマンライブを行う。