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宮城県
復興取材レポート

エッセイスト犬山紙子さんと「想い」と「癒し」を知る一日。

「七ヶ浜みんなの家 きずなハウス」でスタッフの横田順広さん、石木田裕子さんと

津波の傷を癒すアクセサリー。

「わぁ!潮の香りが!」。

春の気配を感じるこの日、エッセイストの犬山紙子さんと訪れたのは七ヶ浜町。
松島湾の展望スポット「多聞山(たもんざん)」からスタートしました。

「むかしは『日本三景?ふ〜ん』くらいしか思わなかったけど、この歳になって来てみると、しみじみいいなぁ」。

子どもの頃から20年以上宮城で過ごした犬山さん。
現在は結婚し、東京でご主人と2歳になるお子さんとともに3人で暮らしています。「子どもにも見せたい」と優しい目で話します。

遊覧船が行き交う松島湾を見ながら次に向かったのは「SHICHI NO CAFE & PIZZA」。
カフェの一角で「シーグラス」を使ったアクセサリーを販売していると耳にし、足を運びました。

「シーグラス」とは、砂浜に打ち上げられたガラスの欠片のこと。
長い時間をかけて波や砂にもまれることで角がとれ、丸い宝石のような風合いになります。

「まるで海の欠片みたいだなと思ったんです」と話すのは、シーグラスアクセサリーを手掛ける「Seven beach manna」の佐藤あゆみさん。
佐藤さんは結婚して七ヶ浜に嫁ぎ、ご主人と2人のお子さんとともに暮らしています。

「シーグラスの石言葉は、絆、生命力なんです。ぴったりでしょう」と「Seven beach manna」の佐藤あゆみさん。

「東日本大震災後、ずっと海に行けなくて。でも、子どもたちまで海から遠ざけてしまってはいけないと思って、5年たってようやく砂浜に行ったんです。恐ろしい津波のイメージで覆われていた砂浜は、行ってみるととても美しかった」と佐藤さんは言います。
「海を見ているうちに涙が出てきてしまって。そんな私を見て、ママ泣かないで、って娘が差し出してくれたのが、シーグラスだったんです。宝石みたいで。海がよく来たねって言ってくれたように思えたんです」。

シーグラスに魅せられた佐藤さんは、砂浜に通うようになりました。

最初は自分のお守りにしようとアクセサリーをつくり始めましたが、娘、友達と徐々にファンが広がり、今では鎌倉の雑貨店でも扱われるようになりました。
「ブランド七ヶ浜」にも認定されています。

「Seven beach manna」さまざまなかたちのシーグラスを使ったヘアゴム。イヤリングやピアスなども並びます。

「今では、海の美しさや豊かさに感謝して、まっすぐ向き合えるようになりました。震災の時のイメージのままでいる人に手に取ってもらい、今はもうキレイな風景があるんだと気づいてもらえたら」と佐藤さん。

犬山さんは「シーグラスも、いろんなことを乗り越えてこの浜にやってきた。佐藤さんの海に対する想いと、通じるところがあるような気がします。震災の傷に寄り添ってくれるアクセサリーなんじゃないかなと思いました」。

「このイヤリングをするたびに、今日の気持ちがよみがえりそうですね」と犬山さん。

孤立を防ぐ、あたたかい居場所。

「アクセサリー一つに、とっても深い想いがありましたね」と話しながら、次に向かったのは「七ヶ浜みんなの家 きずなハウス」。
震災直後から支援に入った愛知県のNPO法人「レスキューストックヤード」が運営している七ヶ浜の人たちの交流の拠点です。

震災からの復旧がひと段落した時点で、宮城県での活動を終える団体も多い中、「レスキューストックヤード」は子どもたちからの強い願いを受け、残留を決めました。

「5年を契機に七ヶ浜を離れようという話が出ていたのですが、それを聞いた子どもたちが、私たちに残ってほしいと署名活動を始めたんです」と経緯を話す七ヶ浜スタッフの横田順広さん。
「震災からしばらく、親も先生もバタバタしているなか、子どもたちには思い切り遊べる場所がありませんでした。そんな時期、うちで活動していたボランティアの学生たちが、目いっぱい子どもたちと遊んでくれたんです。それが、子どもの心に残っていたんだと思います」。

現在は「きずなハウス」を拠点に、駄菓子店やカフェなどを運営。子どもも大人も巻きこみ、イベントやお祭りも行っています。
「ここはたまり場になりそう!」と駄菓子スペースを見た犬山さん。

「懐かしい!ここは小学生のたまり場になりそう!」と駄菓子コーナーで歓声を上げる犬山さん。

「子どもだって、心に辛い想いを抱えているんです。でも子どもって大人に遠慮するじゃないですか。こういう場で孤立せず、寄り添ってくれる大人がいるってとっても尊いことだと思います。親としても、とっても有難いと思う!」。

「七ヶ浜みんなの家 きずなハウス」で七ヶ浜のキャラクター「ぼっけのボーちゃん」を模した「ボーちゃん焼き」を頬張る犬山さん。

「七ヶ浜には、想いに寄り添ってくれる場所やモノがあるんですね」と犬山さんは一日を振り返ります。
「私は今、児童虐待の防止に向けた活動を行っているのですが、一番問題なのが、だれも自分を分かってくれないと孤立してしまうこと。シーグラスのアクセサリーみたいに、辛い気持ちに共感してくれるモノだったり、きずなハウスみたいに、交流の拠点や居場所だったり、そういうものがとても大切だと思います。私も家族を連れてきたい。私が話すより何倍も、この場所のあたたかさや癒しを感じてくれるんじゃないかなと思います」。

(文責・沼田佐和子)

 
 


犬山 紙子
1981年大阪生まれ。子ども時代、学生時代を宮城で過ごし、仙台の出版社でファッション誌の編集を担当した。2011年『負け美女ルックスが仇になる』を出版し、その後はコラムニスト、エッセイストとして活躍。情報番組のコメンテーターとしても知られる。