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復興取材レポート

【復興インタビュー】絆ロール

「黒羽麻璃央の宮城のおいしいをお取り寄せ」で紹介したパティスリークリコの「絆ロール」。パティシエールの高橋宮倫子さん(たかはしくりこ・写真右)と姉の佐藤洋子さん(さとうようこ・写真左)に、「絆ロール」のこと、お二人が切り盛りしている「ニュー泊崎荘」のことを伺いました。

南三陸町歌津地区、泊﨑(とまりざき)半島の先端部にある旅館「ニュー泊崎荘」。目の前に広がる雄大な太平洋を望む絶景のロケーションはもちろん、三陸の海の幸をふんだんに使った海鮮御膳やパティシエ特製のロールケーキが自慢の旅館です。

4年前、旅館の経営を父から引き継ぎ、洋子さんと宮倫子さんの姉妹で旅館を切り盛りしています。2人は小さいころ、旅館が繁忙期の時は親戚の漁師の家に遊びに行っていたそうです。宮倫子さんは、従姉妹のお姉さんと一緒につくったお菓子を漁師さんたちに持っていき、食べてもらったことがきっかけで、お菓子づくりに目覚めます。「とにかくお菓子をつくりたい。つくるのが楽しいし、食べてもらえるのがうれしくて。自然な流れでパティシエの道を目指しました」という宮倫子さん。製菓の専門学校を卒業後、仙台国際ホテルで修行を積みます。「旅館の売店でお菓子を売れたらいいなと考えていたら、父が『会社にしたら?』と言ってくれて。パティスリークリコを立ち上げて、旅館の厨房で製造し、販売を始めました」。

遠方から泊まりにくるお客様から、長時間持ち歩けるお菓子がほしいとの要望を受け、開発したのが「くりちゃんロールケーキ」でした。冷凍で保存でき、解凍後でもしっとりふわふわ食感、クリームも滑らかでコクがあるのに、あっさりと食べられます。メープルやイチゴ、小倉など種類を増やし、宿泊客のお土産にはもちろん、地元の人々の冠婚葬祭や贈りものとして愛される商品となりました。

東日本大震災では、旅館は高台にあったため津波の被害は免れたものの、電気や水道などのライフラインが止まってしまいました。冷凍庫に1000本のロールケーキがあったため、旅館にある毛布や飲料と一緒に歌津地区の生活センターに差し入れたり、家族や知人の安否を尋ねに来た人々に手渡したりと、約1週間かけて配りました。

後日、ロールケーキを食べた方々から「震災のストレスで食欲がなかった子どもが、ロールケーキだけは食べてくれた」、「あの時のロールケーキは本当においしかった」などの声が届き、店の再開を決意します。水道設備機能が復活した6月にロールケーキをつくり、福興市に出店。地元や県外のボランティアの人々の応援の声を受け、感謝の気持ちを込めて「絆ロール」と名前を変えたそうです。

そして、ワカメ漁を生業としていた従兄弟や同級生の力になれないかと、約6カ月かけて完成したのがワカメを使ったロールケーキでした。「ワカメ⁉おいしいの?」という声もありましたが、食べた方からは「おいしい!」と評判に。「震災から何年かしたら、復興支援のイメージが強いワカメロールはなくなると思っていたんです。震災から9年が経っても求めてくださる方がいるのはうれしいです。続けていきたいですね」と宮倫子さん。

「震災をきっかけに、持続可能な地域社会の取組にも目を向けるようになりました」と話すのは、洋子さんです。東日本大震災の津波によるガレキで、国道までの道が埋まってしまい、旅館のある半島部は孤立状態になってしまいました。「電気と水道が止まりましたが、使われていない井戸の水を、だるまストーブで沸かして飲んでいました」と洋子さん。「泊浜生活センターには発電機があったので、支援物資を持って行った際、テレビで被害状況を見ることができたんです」と宮倫子さんは言います。

地域の方々とお米を持ち寄ったり、ユンボ(油圧ショベル)を持っている方がガレキをかき分けて助けてくれたり。みんなで協力して田束山(たつがねさん)まで何度も往復して、集落分のお水を調達。ワカメをボイルする大きなタンクをお風呂として使ったことも。夜はみんなで語り合いました。「地域の方々のつながりと、地域の資源で生き抜いたことで、『世の中は発展して進化しているけど、これでいいのかな?』と考えるようになりました」と洋子さん。

持続可能な社会のために、旅館としてできることは何かと模索している時、南三陸町で支援活動をしていたアミタ株式会社のバイオマス産業都市構想に賛同。捨てられていた生ごみを液肥(液体肥料)として土に還すBIOシステムに、いち早く事業者として取り組み、生ごみの分別を始めました。

現在「ニュー泊崎荘」では、南三陸町産の液肥でつくられた資源循環型のお米を使った料理を提供しています。また、町民は無料で液肥がもらえるため、自分たちの畑で試験的に野菜の栽培も始めています。洋子さんは「液肥をまいて育てると、普通の肥料よりも育ちがいいんです」と言います。「100%南三陸町産の食材を提供できたら」と宮倫子さんは目を輝かせます。

環境に配慮し、適切に手を入れ、いのちを巡らせること。これは現在、地球規模で取り組む国際的な目標、SDGs(エスディージーズ・持続可能な開発目標)に繋がります。洋子さんと宮倫子さんは「持続可能な旅館」を目指し、これからもさまざまな取組を続けていきます。

ニュー泊崎荘

http://tomarizakisou.jp/

「黒羽麻璃央の宮城のおいしいをお取り寄せ」の「絆ロール」の記事は、以下よりご覧いただけます。

【黒羽麻璃央の宮城のおいしいをお取り寄せ VOL.3】