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宮城県
復興取材レポート

【復興インタビュー】宮城 武雄さん

『3.11を忘れないで~東日本大震災の痕跡~』『東日本大震災 1000人の被災者が伝える 命を守った1000人の証言』という2冊の記録集があります。制作した多賀城市の宮城武雄さんに、この記録集に込められた想いを伺いました。

記録集を制作し、震災の記憶を伝える活動をしている宮城さんは、写真家(アマチュアカメラマン)としての顔も併せ持ちます。写真を始めたきっかけは、サラリーマン時代、定年後に向けて何か始めようと考えたことでした。個人で楽しむより、コミュニケーションをとりながらみんなで楽しみたいと、会社内に写真クラブをつくったり、社会福祉協議会で写真講座を開いたり、様々な活動をしてきました。また、民生委員や児童委員、ボランティアで多賀城市の歴史ガイドも。そんな中、東日本大震災が起こります。

「記録しなきゃと思った」。当時を振り返り、宮城さんはそう話します。

被災した宮城さんは、多賀城東小学校に避難。避難所では食事係を担当しました。朝食の準備は朝6時からのため、早朝の5時くらいから6時までの間にシャッターを切りました。「被災した人々の写真は撮りたくなかったので、早朝の時間がちょうどよかったんです」と宮城さんは言います。

そして2012年に『3.11を忘れないで~東日本大震災の痕跡~』を自費出版しました。写真だけではなく、歴史地理学者の吉田東伍が1906年(明治39年)に、869年(貞観11年)に発生した貞観地震についての論文を発表しており、『日本三代実録』の記述から津波が国府のあった多賀城の城下まで達したことを論証し、警鐘を鳴らしていたこと。元学校教員で歴史研究者の飯沼勇義さんが、1995年に「仙台平野の歴史津波」を出版し、地震による大津波に警鐘を鳴らしていたことなど、地震や津波に関する伝承が盛り込まれています。

また、宮城さん自身が約2カ月かけて200地点を調査した「多賀城市と七ヶ浜町の浸水域と津波痕跡高 概況図」、震災当日の潮の満ち引き図「潮汐推算図」など、どこにどのくらいの高さの津波が来たのかが詳細に記載されています。

この記録集は、多くの人々から問い合わせがありました。淡路島の高校の先生や東京大学法学部からも勉強の資料にと取り寄せの要望があったそうです。「記録を残したのは、後世に伝えたい、子々孫々まで安寧を祈る気持ちからです。多賀城は歴史の町。先人が残したたくさんの警鐘の記録があるにもかかわらず、東日本大震災では悔しい想いを繰り返してしまった。この記録集を読んでもらい、自分たちが住んでいる地域がどういう場所なのかを知り、それに合わせた防災対策をしてもらいたいと思っています」。

宮城さんの想いは、この記録集だけにはとどまりません。「震災時の記録は完成しましたが、現代の災害は多様化、そして甚大化しています。今後、多くの人々が生き抜くためには、東日本大震災で生死を分ける瞬間を経験した被災者の証言が必要なのではと思ったんです」。

2016年3月から2018年9月までの約2年半をかけ、岩手、宮城、福島の沿岸37市町村の被災者1001人の証言を集め、2019年に自費出版されたのが『東日本大震災 1000人の被災者が伝える 命を守った1000人の証言』という記録集です。

なんと、取材は宮城さんがたった一人で、一軒一軒飛び込みで訪問。何カ月も人と話していなかったという寡黙な人、亡くなった息子が生きていた証になるならと話してくれた人など、小学生から高齢者まで、幅広い世代の証言を集めました。「もちろん取材拒否をされることもあったし、時には涙を流しながら聞くこともありました。行脚(修行)ですね」と宮城さんが当時を振り返ります。

「多くの証言を分析していくと、『津波が来てから逃げた』ではなく『地震が発生してからすぐに逃げた』人が多いんです。日頃の防災の知識や防災への関心度が高い人が多いと感じました」。ある仮設住宅の女性は「じいじ、ばあばに助けられた。小さい頃、10日に1回は津波の話を聞かされていたから、すぐ逃げることができた」と話してくれたそうです。「コミュニティがしっかり取れている地域はすばらしいと思いました。大人たちは、『地域の子どもたちは全員自分の子ども』だと思っているんです。地域のつながりは大切だと感じました」。

現地取材に196日、走行距離は22,172キロに及びました。「ある記者さんに『地球の約半分の距離じゃないですか』と言われてびっくりしました」と宮城さんは笑います。東日本大震災の教訓は、地形や人口構成、地域の文化によって異なり、それをこの証言記録一冊で理解することができると注目を集めています。

宮城さんの活動は続きます。「まずはこの本を持って普及活動をすることです。今後も高い確率で起きると予測されている大災害に対して、本誌を読むことで防災・減災の意識を向上し、多くの命を守ることにつながれば幸いです。また、証言してくださった方々へお礼にも行きたいですね。ゆっくりしてはいられないんです」と話してくれました。

「あの時のような体験をしてほしくない」という想いが込められた宮城さんの2冊の記録集。これらを読んで、自分の命を守るヒントを見つけ、生き抜く力につなげてもらえたらと思います。