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復興取材レポート

【復興インタビュー】仙台インプログレス

せんだいメディアテークが中心となり、様々なアートプロジェクトに取り組む「せんだい・アート・ノード・プロジェクト」。その一つで、世界的に活躍するアーティストの川俣正さんとともに展開する「仙台インプログレス」について、せんだいメディアテークのアーティスティック・ディレクター甲斐賢治さんにお話を伺いました。

津波で流された橋を、再び。

仙台市によって、図書館を含む生涯学習施設として、2001年に誕生した「せんだいメディアテーク」。東日本大震災後、まちで行うアートイベントの可能性を探る中、仙台に熱のある「アートの現場」を創りだすべく、2016年度から「せんだい・アート・ノード・プロジェクト」がスタートしました。以来、「優れたアーティストのユニークな視点と仕事」と、地域の「人材、資源、課題」をつなぐ様々なプロジェクトを展開しています。

その一つが、フランスを拠点に活躍する川俣正さんとともに進める長期プロジェクト「仙台インプログレス」です。震災復興という課題にアーティストの視点で取り組むために、まずは仙台市の津波被災地区をリサーチ。そこで着目したのが、津波により堤防や護岸が破壊された「貞山運河」でした。リサーチを進める中で、運河に隣接する新浜地区の住民から「橋が津波で流されて運河を渡れなくなった」という話を聞いた川俣さん。「それならばもう一度橋を架けよう!」と構想したのが、「仙台インプログレス」のプロジェクト第一弾となる「みんなの橋プロジェクト」でした。

海との関係を取り戻すきっかけづくり。

「みんなの橋プロジェクト」はその名のとおり、津波被災地区の浜辺と海をつなぐために、橋の機能を持った作品を制作する取組です。しかし、プロジェクトのスタート時から携わる甲斐さんは、「橋の完成というシナリオを描いているわけではない」と言います。「橋を架けることを最終のゴールとしてあらかじめ決めているわけではなく、その過程で出会う人や出来事から受ける影響を楽しむことを大切にしています。向かう先を描きながらも転がりながら考えていくプロジェクトなんですね」。確かに「仙台インプログレス」は橋を架けるという構想からはじまったプロジェクトですが、作品の制作や住民との交流プログラム、橋の構想を模型にするワークショップなど、同時に様々なアクティビティを展開しています。

たとえば、昭和40年代まで地域で活用されていた「馬船(うまぶね)」に着想を得た「みんなの船」の制作。完成後には、新浜町内会が企画・実施している「渡し舟と新浜フットパス」に参加し、実際に船で対岸まで渡りました。渡った先にあるのは、海側に広がる防災林へと続く道として2019年に制作した「みんなの木道(もくどう)」。全長約120mの木道沿いには、海とともに生活してきた新浜地区の暮らしぶりを伝える石碑があります。橋や船で運河を渡り、木道を歩いて海へ出る―。「みんなの橋」からはじまったプロジェクトは、小さな連鎖反応を起こしながら、貞山運河一帯に賑わいを取り戻す一助となりつつあるのです。

復興とアート。かけ離れたもののようですが、甲斐さんはそれらをつなぐ「仙台インプログレス」の活動を、「アーティストの発想や発信力を借りて、震災でどこか遠くなってしまった海との関係をつくりなおすきっかけづくり」とまとめます。「イン プログレス(in progress)」とは、「進行中」の意。人々がアイディアを持ち寄り、時には制作に参加しながら、「仙台インプログレス」の取り組みはこれからも現在進行形で続いていきます。

仙台インプログレス

https://artnode.smt.jp/project/kawamata_project

川俣正

http://www.tadashikawamata.com/