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復興取材レポート

【宮城発!元気と食の最新情報】合同会社よあけのてがみ 東北☆家族 よあけの猫舎

石巻市にある、国内外の猫好きが集まる民泊「よあけの猫舎」。このユニークな民泊をはじめとする、さまざまな事業を手掛けるのが、2015年秋に東京から宮城県石巻市へと移住してきた塩坂佳子さんです。

塩坂さんと、被災地である宮城県との繋がりは2011年6月まで遡ります。震災後、塩坂さんは、仙台市荒浜地区や石巻市を中心に、瓦礫処理や半壊家屋の掃除などの肉体労働的なボランティアに従事し、多くの被災者と交流を深めてきました。

東京ではフリーランスのライターや編集者として、雑誌の記事作りに携わりながら、毎月宮城県に通う生活を送り、2013年には上海在住のイラストレーター・ワタナベマキコ氏と共に、被災地の名産品をキャラクターにした東北応援プロジェクト『東北☆家族』を立ち上げます。

『東北☆家族』を立ち上げたきっかけは、塩坂さんが仲良くなった石巻市の復興商店街の店主から、「頑張ってお店を再開して商品を並べても、まったく売れない」という相談を受けた事から始まりました。

そこで塩坂さんは、他県から来る若いボランティアや観光客にうけが良さそうなものを並べてみようと、友人のイラストレーターに相談し、石巻の名産品をキャラクターにした缶バッジやタンブラーなどのグッズを制作。復興商店街の雑貨店に卸し、店頭に並べてもらったところ、好評のうちに売り切れたのです。その後、塩坂さんはグッズを販売して売上げの一部を寄付したり、震災の「語り部」として活用することを思い立ち、被災3県の特産品を続々とキャラクター化して、WEBサイトで被災地の情報発信などを行ってきました。

そんな活動の様子を見た石巻市の職員から誘いを受け、2015年の秋、塩坂さんは石巻市に移住を決めます。最初の2年間は市の外部機関である石巻市6次産業化・地産地消推進センターに籍を置き、産業復興支援員として、復興の課程で生まれてきた新たな特産品やレシピなどを紹介するWEBサイトを開設。街の様々な情報を発信してきました。さらに週末は、JR石巻駅の近くに『東北☆家族ショップ』をオープンし、自ら店頭にも立ち続けました。

「石巻市とは震災以降、様々な縁がありましたが、移住までは考えていませんでした。被災地で見聞きした人々の思いや体験を伝えたいと思う反面、風化が早い東京では「震災の話はもう結構」という雰囲気で、東京と東北を何度も往復するうちに、そのギャップに苦しむことが多くなりました。どうしたら人々が関心を持つ形で、震災から生まれた大切な教訓を伝えられるかと考え続ける日々。そんなタイミングで石巻の職員さんから声を掛けてもらったので、あまり悩まずに、エイヤッ!で移住を決めました」。

石巻に住んで丸2年が経った2017年9月、塩坂さんは市の機関を退職し、街を元気にする事業を多角的に行うというコンセプトで『合同会社よあけのてがみ』を設立します。同時に、かねてから念願だった猫と暮らせる家を探して、坂の上にある築約50年の庭付き物件に出会いました。これがのちに、民泊『よあけの猫舎』にもなる一軒家です。

「最初は家を買うなんて思ってもいませんでしたが、内覧した瞬間に、住んでいたご家族の品格や愛情が伝わってくるようでした。持ち主は90代のおじいさんで、震災後は関東の息子さんの家に身を寄せていらっしゃいましたが、亡くなった奥様が華道の師範だったと聞いて、納得。素敵な庭や古い調度品などに、一目ぼれしてしまいました」。

塩坂さんは自宅兼オフィスとして、この一軒家を購入。するとほどなく、友人たちが路上で拾ったキジトラの子猫(ふーちゃん)を連れてきてくれました。そして約1年後には、Facebookで里親募集が行われていた黒猫(クロちゃん)も引き取り、現在は2匹の愛猫との暮らしを楽しんでいます。

この一軒家を拠点として合同会社を設立後、塩坂さんは、『東北☆家族』や前職中に立ち上げた「石巻さかな女子部」(魚をおろせる人を増やし、魚の街・石巻から日本の魚食文化の復活を叫ぼう!と提唱、発信する任意団体)を継続、東京時代に仕事で関わっていた雑誌「婦人公論」にも東北復興に関するルポを寄稿するなど、さまざまな活動を続けていきます。さらに2019年の春には、いよいよ民泊事業もスタートさせました。

「近所に住む友人が先に民泊を始めていましたが、私は知らない人を家に泊めるなんて無理!と思っていました。でも一方では、家が広すぎて活用しないのはもったいないと感じていたのです。そんな時、猫島として有名な石巻の離島・田代島に行って、いろいろな国からの外国人旅行者たちが、猫を取り囲みながら微笑みあっている姿を見かけました。まさにそれは、猫がつなぐ世界平和の光景(笑)。

そして彼らに話を聞いてみると、多くが田代島に来るためにインターネットでフェリーや宿の情報を検索したけれど、『日本語ばかりでよくわからず、不安だった』と言うのです。『それでも憧れの猫島だから頑張って来たよ』と言われて感激!こういう人たちなら、民泊を始めておもてなしするのもいいな、と思うようになりました」。

民泊事業の登録が済み、予約サイトに「よあけの猫舎」と名付けた一軒家の記事を掲載すると、さっそく田代島を目指す国内外の旅行客から、予約や問い合わせが入りました。昨年のゴールデンウイークから秋口にかけてはほぼ連日のように、日本人以外にもスコットランドやカナダ、ドイツ、フランス、スウェーデン、アメリカ、台湾、香港、中国と多くの海外ゲストが訪れたそう。「よあけの猫舎」は田代島行きのフェリー乗り場まで徒歩10分という好立地に加え、愛猫のふーちゃん女将、クロちゃん女将によるもてなしが、猫好きのゲストたちをおおいに喜ばせています。

「海外のゲストから、色々と教えられましたね。Amazonプライムというサービスの中に、英語字幕がついた田代島のドキュメンタリー番組があることや、日本での旅行中のアクティビティについて検索すると、猫島行きを勧められ、田代島がトップに出てくることなど。『世界中がキャットアイランド(田代島)に憧れている、知らないのは日本人だけだよ!』と言ったゲストもいました(笑)。さらに、外国人観光客は食事に困っていることも分かりました。飲食店に入っても日本語のメニューしかないので、あてずっぽうで注文することが多く、食べたいものを食べられない、ベジタリアンやヴィーガン(完全菜食主義)で、食べられるものが少ないなどと言う人もいました」。

そこで塩坂さんは、石巻のまちづくり会社の理事でもあり、老舗割烹「八幡家」を営む阿部紀代子さんにこの話をします。すると阿部さんも、「せっかく石巻まで来てくださっているのに、おいしいものを食べていただけないなんて!」と悔しがり、塩坂さんのアドバイスをもとに、猫好きの観光客をターゲットにした新商品の開発を始めることにしました。こうして2020年2月22日(にゃんにゃんにゃんの日)に、「まきのねこバーガー」(要予約/テイクアウトのみ)が誕生。パテは「仙台牛100%」や石巻が誇る「金華銀鮭のマリネ」、ヴィーガン(完全菜食主義)の人も食べられる「みやぎしろめ(大豆)」の3種類から選ぶことができ、バンズにはひとつひとつ手描きで、違った猫の顔が描かれています。

ストーリー作りや印刷物の制作などは、塩坂さんの『合同会社よあけのてがみ』が担当しました。石巻で開催する猫イベントも企画中で、今後は猫を通した街おこしを進めていく予定だといいます。

また、石巻駅の近くで営んでいた『東北☆家族ショップ』は2017年に閉店。現在は同じ年に完成した物産館「いしのまき元気いちば」でグッズの販売だけでなく、キャラクターたちが売場全体の案内役となり、宮城県や石巻市のさまざまな名産品を日本語と英語で紹介しています。

「『人と街を元気にする!』をコンセプトに、いろいろな事業や活動を続けてきましたが、ようやくひとつひとつが実になってきたように感じます。そして、そのすべてを通して伝えたいのは、暮らしの中での本当の豊かさとは何だろう?ということ。実は、経済よりも優先すべき、大切なものがあった。それを東北から全国に伝えていきたいと思っています」。

2020年3月11日を迎え、あの震災から9年の歳月が流れました。

塩坂さんから震災以後の活動のお話をお伺いしていく中で、特に印象に残った言葉があります。

「東日本大震災が見せつけた『真実』を忘れてはいけない。」

震災は、現代社会がいかに自然という砂上の楼閣の上で成り立っている蜃気楼であるかを私達へと知らしめた出来事でもありました。

現在はコロナウイルスが世界各地で猛威を奮い、私達の生活に密着した様々な事柄に逆風が吹き荒れています。これは、あの時と同じ様に私達に「生」というものが、いかに不確定な事であるかを知らしめているかの様にも感じます。

ただ、塩坂さんの言葉をお借りするなら、私たちは9年前にまざまざと「真実」を見せつけられたという経験を持っているはず。世界と共に繋がりながら困難を乗り越えるためのヒントを持っている可能性があります。

あの経験を活かすことができた時にこそ、私達は真の「夜明け」を迎える事ができるのかもしれません。

 

合同会社よあけのてがみ

https://yoakenotegami.jimdofree.com/

東北家族オンラインショップ

https://thk.stores.jp/

民泊よあけの猫舎

https://airbnb.com/h/yoakeneco

https://yoakeneco.jimdofree.com/

石巻さかな女子部

https://www.facebook.com/sakanajosibu/

まきのねこバーガー

https://yahatayaneco.com

 

執筆者PROFILE
一般社団法人IKI ZEN 佐藤大樹