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宮城県
復興取材レポート

【名取】
前よりおもしろく、前以上に幸せに。想いがこもった復興のまち。

>>「NOW IS.対談 in 名取 里村明衣子さん×名取市役所 中澤真哉さん」はこちら

広い敷地でのびのび遊べる名取市サイクルスポーツセンター。おもしろ自転車は、子どもにも大人にも大人気。

まちの人々が集まる、
ワクワクする施設。

サイクルスポーツセンターの4kmにわたるサイクリングロードは、海と防潮林の間に設けられています。
ユニークな形の自転車を漕ぎながら「これは気持ちいい!自分の自転車を持ってきて、このコースを走りたい!」と里村さん。

「これは楽しい!」と笑顔を見せる里村さん。

「ぜひ温泉にも!昼間もいいですが、個人的におすすめなのは夕暮れ。山々に沈む夕日を眺めながら温泉に入れるんです。最高ですよ!」と中澤さんは笑います。

「ワクワクする、とてもいい場所ですね」。施設を巡りながら里村さんは話します。

「何もないところから、つくり上げるというのは、ちょっと共感するところがあります。私は、震災をきっかけにセンダイガールズプロレスリングを引き継ぎました。ほとんどゼロからのスタートです。振り返れば大変でしたが、『震災前よりも絶対いい風景をつくってやろう』と頑張りました。サイクルスポーツセンターの方々もきっとそうだったと思います。まちの方々が集まる場になりそうですね」。

レンタル用の自転車はスポーツタイプから子ども用までさまざま。ヘルメットもレンタルできます。

次に訪れたのは、2020年5月に開館した「名取市震災復興伝承館」。
東日本大震災の被害を伝えるとともに、津波や洪水などに対する防災について学べる施設です。

震災前の街並みを再現したジオラマを見て「よくつくりましたね、こんなに一つひとつ…」と里村さん。
復興までの歩みを紹介したパネルにも、真剣な表情で見入ります。

水害に対する防災を学ぶコーナーでは、30cmの浸水時に足にかかる重さを再現した下駄を履き「こんなに重いの!」と声を上げました。「自分が経験していないことは、体験したり、学んだりしないと理解できないものですね。こうやって疑似体験できる場をつくることは、とても大切なことだと思います」。

「こんなところにまで津波が…」と里村さん。「名取市震災復興伝承館」のジオラマでは、津波のスケールを感じられます。

閖上の気候と水が
つくり上げるビール。

「名取市震災復興伝承館」と「名取市サイクルスポーツセンター」の完成をもって、閖上地区のハード面の復興はほぼ完了しました。
土地の整備も進み、民間の人々の店や施設もどんどん増えています。

「宮城ゆりあげ麦酒醸造所」の前で、ビールを持って。

次に訪れた「宮城ゆりあげ麦酒醸造所」もそのひとつです。

もともと亘理町で地ビールを生産していましたが、醸造所が津波で流失。岩手県花巻市で仮工場を立ち上げ、生産を継続してきました。

「花巻の水は硬水。閖上は亘理と近い軟水だから、ようやく前のようなビールがつくれるようになった、という気持ちかな」と代表の原勉さんは言います。

「気候も温暖だから、冬でもビールをつくれるしね」。
そう言うと、「まずは飲んでみなきゃ!」と里村さんを醸造所に誘いました。

タンクから直接ビールを注ぎ、「これは亘理の時からつくっていたイチゴのエール」と手渡します。里村さんは一口飲んで「おいしい!すごくフルーティですね!」と笑顔を見せました。

「味わいがこんなに違うんですね」と里村さん。

原さんはうれしそうに頷きます。
「うちは、ピルスナーやヴァイツェンなどの定番もおいしいんですけど、フルーツのエールもおもしろいでしょ。地元のフルーツも使ってみたいと思って、名取の北釜メロンを使ったエールも試作中なんです」。

「酵母が生きてるんですよ」とビールのつくり方を説明する工場長の北條仁さん。

「うちの団体に、こういうビールが大好きな選手がいるんです!今度連れてきたいな」と里村さん。
宮城ゆりあげ麦酒醸造所では、現在瓶ビールの直売も行っています。

文化が混ざる場に
地中海風のしらすカフェ。

「仕事終わりに立ち寄れるカフェにしたい」とCafé maltaの相澤さん。

最後の訪問場所は「Café malta(カフェ マルタ)」。
名取の新名物・北限のしらすを扱う「マルタ水産」が10月26日にオープンしたカフェです。

ベンチが置かれた広めの前庭の奥には、白い壁のおしゃれな建物が。
里村さんは「かわいい!」と声を上げます。

「地中海のマルタ島をイメージしたカフェなんです。マルタ水産とマルタ島には、なんの関係もないんですけどね」。はにかみながらそう話すのは、専務の相澤太さん。
「マルタ島は様々な国の人々が行き来する場で、そういうところが震災後の閖上と似ているなと思って。閖上も、文化の混ざる場になったらと思ったんです」。

カフェで提供されるのは、しらすを用いた洋食です。

「しらすはどんな料理とも相性がいいんです」と相澤さん。「しらすだけじゃなく、名取のいろいろな食材を使っていきたいです。名取の魅力が集まる場にしたいですね」。

「Café malta」には、しらすの加工品や名取市の特産品が並ぶ直売所もあります。

「想いを感じますね」。
取材を終えて、里村さんはそうつぶやきました。

「名取市サイクルスポーツセンターの方々も、醸造所の原さんも、カフェの相澤さんも、前よりおもしろくしてやる、前以上に幸せになってやる、という想いが強いんだろうなぁと思いました。閖上を忘れずに頑張ってきた人たちが、10年経って戻ってくるって、なんだかすごくうれしい。私も震災直後に団体の代表を引き継いでから10年経ちました。良くなったり悪くなったりを繰り返して、ようやく今、いい雰囲気をつくれるようになってきた。希望を持って歩き続ければ、必ずついてくるものがある。改めて、そんなふうに感じることができた1日でした」。

【ここに注目! NOW IS.EYE’S】

名取川の堤防沿いに建てられた「名取市震災復興伝承館」。東日本大震災の被害を伝えるパネル、映像などがあり、語り部ツアーなどの拠点にもなっています。防災について学べる体験型の展示も。


里村明衣子(さとむら めいこ)
1979年生まれ、新潟県出身。15歳でGAEA JAPANに入門し、プロデビュー。2005年にセンダイガールズプロレスリングが発足し、東日本大震災を機に選手兼代表取締役社長に就任。近年はボディビルダーの選手としても活躍。