みやぎ復興情報ポータルサイト
宮城県
河北新報による復興に関する記事

多賀城高「災害科学科」今春スタート/最先端防災学習 38人挑む/大学・企業と連携 実践重視

※下記記事は2016年7月10日に河北新報朝刊に掲載された記事です。掲載している数値などについては、現在の数値は異なる可能性があります。

多賀城市の多賀城高に今春、東北初の防災系専門学科「災害科学科」が新設され、1期生38人が入学した。東日本大震災の教訓を基に、防災分野で活躍できる人材を育成するのが狙い。災害に関する専門科目がカリキュラムの4分の1を占め、外部講師の授業や野外実習など内容も多彩だ。(菊池春子)

K201607100A0T20XX00001
模型を使った授業で、地震の揺れについて学ぶ生徒ら=5月25日、多賀城市の多賀城高

「君たちはどっちの家に住みたい?」
5月下旬、災害科学科で行われた専門科目「社会と災害」の授業。講師の問いに、生徒らは紙でできた二つの家の模型をのぞき込む。家の下に敷かれた「地盤」は、炊いたコメを固めたものとプリン。地盤の違いによる地震の揺れの差を学ぶ実験だ。
「柔らかい方が揺れる」「コメの方が隙間があるから動きそう」。生徒らは口々に予測する。模型を動かすと、泥が堆積する「軟弱地盤」を模したプリン上の家は大きく揺れた。
「社会と災害」は地理を基本に、災害の背景を学ぶ科目。この日は、企業で建設コンサルタント経験のある大崎市鹿島台中の深瀬規友(のりとも)教諭が講師を務め、地質や地形の特性に起因する災害を解説した。
「現代は人口が増えて生産活動の場が拡大し、軟弱な地盤にも家や工場が建っている。昔と比べて災害が起きやすい社会基盤にある」と深瀬教諭。「災害の要因を理解し、適切な判断ができる人になってほしい」と語り掛けた。
災害科学科は、津波浸水域に近い多賀城高に宮城県教委が開設。全国では阪神大震災被災地の兵庫県舞子高(神戸市)に次ぎ2例目となる。
既存の科目に防災の視点を加えて構成した独自の専門科目=表=を履修。普通科の生徒も学ぶ「くらしと安全A」などを含めると10科目に上り、1年次は週の半分が専門の授業だ。
1期生の出身中学は多賀城市内を中心に、仙台市や石巻市、気仙沼市など広範囲にわたる。ほぼ全員が大学への進学を希望。災害研究者のほか、公務員や看護師を目指す生徒も多い。「防災知識で人の役に立ちたいという目的意識が高い」(佐々木克敬教頭)という。
高度な授業を目指し、大学や研究機関とも連携する。東北大災害科学国際研究所とは協定を結び、講師派遣などで提携。7月には、海洋研究開発機構(神奈川県横須賀市)の協力で、津波による塩害などを学ぶ実習を塩釜市の浦戸諸島で行う予定だ。
佐々木教頭は「さまざまな学習を経て、次は自分たちでどう課題を見つけるかというステップになる。3年次には、互いに発表して助言し合うゼミ形式の授業の導入も検討したい」と話す。

 

K201607100A0T20XX00001

◎将来の夢 1期生に聞く

多賀城高災害科学科の1期生はどんな思いで日々学び、将来何を目指しているのか。生徒の声を聞いた。

<気仙沼に戻りまちづくり/阿部大和(やまと)さん(16)=気仙沼市小泉中出身>

K201607100A0T20XX00001
気仙沼市本吉町出身で多賀城市内に下宿しています。実家は高台にあり震災の津波は免れましたが、クラスの友達の半数以上が家を流されました。災害とどう折り合って生活すべきか考えさせられ、中学の先生の勧めも受けて入学しました。
学校外の先生の授業が多く、他では学べない内容が豊富で充実感があります。宮城県図書館の方によるデジタルアーカイブ活用の授業が興味深かったです。
卒業後は大学に進学して都市計画を学びたい。将来は気仙沼市に戻り、公務員としてまちづくりに関わりたいと思っています。

<元気与えられる隊員 目標/鈴木結依さん(15)=多賀城中出身>

K201607100A0T20XX00001
中学校では習うことのなかった分野の学習がたくさんあり、みんなが積極的に取り組む姿に刺激を受けています。
震災では石巻市の祖母の家が流され、両親とがれきの片付けを手伝いました。当時は小学4年。津波の怖さや支援してくれる人のありがたさを痛感しました。災害対策の大切さを考え、入学を決めました。
将来は自衛隊に入りたいと思っています。災害時に困っている人を元気づけられる隊員になりたい。吹奏楽部でトロンボーンを続けており、音楽隊で活動するのが目標です。

上記記事の著作権は株式会社河北新報社に帰属します。記事・写真などの一切の無断転載を禁じます。