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復興取材レポート

【語り部が本当に語りたいこと】一般社団法人ボランティアステーションin気仙沼 菊田忠衞さん

伝承(伝わるように)
大川の河口で休憩している時、突然、緊急地震速報が鳴る。激しい揺れに襲われ身動きできない。道路は波うち、地割れがはしり、電柱は根元から激しく揺れている。川の水は速度を速め引きはじめていた。津波が来る!

自宅は全壊した。家族をくまなく捜し回り、山の手にある総合体育館(ケーウエーヴ)の避難所(避難民2000人)で、4日目にやっと妻に再会できた。両親は、震災から25日目の4月4日に自宅の、ガレキの中から発見された。
震災は、人々の幸せを破壊し、津波は、人々の心を打ち砕きました。

私は、奇跡的に生き延びることができました。無念の死を遂げた両親と多くの方々、与えられた天命を全うすることは、震災の教訓を後世に伝えることが生かされた者の務めであり、できる限りを尽くすことで供養になればとの思いから語り部を始めました。
(気仙沼市にも、過去の津波災害の教訓碑がたくさんあります。しかし、教訓碑だけでは風化してしまいます。だから、伝承しなければならないのです。)

語り部を行っていて感じるのは、災害を対岸の火事と考えている人が多いことです。危機意識の欠如を感じます。

「人間は、偏見や先入観、思い込みに陥りやすく、自分にとって都合の良い希望や願望が優先されるのです。これをバイアスといいます。バイアスには、正常化バイアスと多数派同調バイアスがあり、この二つは、災害時の被害を拡大する要因とされています」。

自然災害は、地震や津波だけではなく、火山の噴火、台風、豪雨、異常低温、洪水、高潮などいくらでも起こりうるのです。災害が起こってからでは間に合わないのです。家庭内や会社、どこにいても防災意識をもたなければ、災害に巻き込まれてしまいます。

今、次に起こるかもしれない自然災害として、西南日本(南海トラフ)や関東地方(直下型地震)がクローズアップされています。しかし、現代の地震学でも大地震の発生時期を明言することはできません。但し、「地震・津波は、不可避で必至な現象」です。

いつどこで起きるかわからない地震災害から身を守るすべは、過去の地震学に学び、時期はわからなくても、発生すると何が起こるかを理解しておくことが地震対策の第一歩です。そこで、地震や津波の特性を知ることが重要となります。

 

地震の特性
地震は、一概ではない多様な現象。二つに大別すると、一つは「激しく揺れる」、もう一つが「弱い揺れでもゆったりとした揺れが長く続く」のが規模の大きい地震です。
このような地震に遭遇した時には、津波襲来の危険が大きいので、急いで高台へ避難することが肝要です。
明治・昭和・平成の三つの地震は、地震発生から海岸に到達するまでおよそ30分。速度は400kmに達します。

 

津波の特性
「海水が急に沖へ引いていけば津波の前兆」とみるのは正しいのですが、「津波が来る前には必ず海水が引く」というわけではないことに注意してほしいのです。
津波は、断層が動いて、海の中で海底の地形が変化することで起きます。海底面が隆起して津波が起きたときには「押し波」から、沈降して起きたときには「引き波」から始まる。
海岸に押し波が先に来るか、引き波が先に来るかは誰にもわからない。因って、津波は引き波で始まるとは限らないのです。津波の前に潮が引くと認識していると、非常に危険です。

 

ハザードマップ(災害予測地図)
災害発生時に住民を迅速・的確に避難させると同時に、二次災害を防ぐ目的があります。その地域の人たちが災害に巻き込まれないようにと作られるものです。
津波防災の場合は、「確かな記録に残る過去最大級の津波」を指標にするのです。
三陸地域では、1896(明治29)年に発生した明治三陸地震津波を想定し推進してきました。

3月11日に襲来した津波は、ハザードマップの想定をはるかに超えるものでした。ハザードマップは過去のデータに基づいたものであり、予測できない災害に対して必ず安全というわけではありません。ハザードマップは想定であり、固定観念をもたないで参考程度にとどめておくことが重要です。

東日本大震災については、「想定外」という言葉がたくさん使われました。被災した地域は、想定外だったから被害をうけたわけではないのです。また、想定が甘かったわけでもないのです。ハザードマップに固定観念を持ち、「想定にとらわれすぎた」ゆえの悲劇ではと思うのです。想定にとらわれることなく、災害の犠牲にならないためには、未経験で不確かな状況下でも躊躇することなく、妥当な意思決定を行わなければならないのです。平時から避難訓練や防災訓練に取り組むことで緊急時の対応が可能となるのです。

災害を前にしても、多くの人が避難しないのは、災害に対する正確な認識が持てないためなのです。身に及ぶ危険があるという実感を抱くことが、避難行動を起こすために欠くことのできない条件なのです。災害の脅威をしっかりとイメージすることが、被害回避の避難行動を起こすために何よりも重要です。

立地や障害者・要支援者・高齢者がいる場合を除いて避難は原則、車を利用しない。車を利用して渋滞になったら、躊躇することなく車を乗り捨て、高台へ逃げる。
「自分の命は自分で守る」という主体的な姿勢が何よりも重要なのです。

家庭内で防災意識を高め、避難場所や連絡の方法などを申し合わせしておくことが大事です。また、避難場所までの避難経路(複数)・危険箇所がないかを確認しておくことや、最小限の備蓄品を用意することも大切です。

気象災害(台風、局地的ゲリラ豪雨)の場合、随時、気象庁から警報が出されますから、対処も可能になります。

しかし、地震や津波災害は、災害因の発生から被害の発生までの時間間隔が相対的に短く、緊急対応をとる必要があります。津波というのは、地震が起こってからの限られた時間で、どういう対応をするかが重要です。また、津波は川を遡上します。川からの避難方法は、並行避難ではなく、直角に避難するのが基本です。

緊急時にはさまざまなことが起こり、スムーズな避難ができなかった状況が多くの犠牲者を生むことになったのです。災害の犠牲にならないためには、避難訓練を欠かしてはならない。緊急時に避難の徹底が重要です。

将来、津波は必ず来る。私は、これを皆さんにしっかりわかっておいてもらいたい。いつの日かわからないけれども必ず津波は来る。
【津波避難の要点は唯一、地震が起きたら津波を想起し、一目散に高台へ逃げる】
100メートルを10秒で走っても、速度は36km。津波は陸に上がっても、非常に速い速度で押し寄せてきます。到底走っては逃げきれないのです。

 

一般社団法人 ボランティアステーションin気仙沼
菊田忠衞
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