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復興取材レポート

次は、私たちがみんなの役に立つ番です 多賀城高等学校災害科学科 佐藤岳さん・渡邉怜那さん

「うちは1階が浸水し、通っていた小学校に2日間避難してました。いつもと違って人が多くて、すごく疲れたのを覚えています。かわいがってくれた近所のおばあちゃんが亡くなったのはとても悲しかったです。辛かった思い出はたくさんありますが、楽しいこともありました。ボランティアの人が遊んでくれたり、自衛隊の人に親切にしてもらったり、新しい友達ができたり。こんな災害はもうないほうがいいんですが、もしあったら、今度は私がみんなに優しくしてあげたい」。

渡邉さんは、小学3年生だった当時を振り返り、そう話します。佐藤さんも深くうなずきながら「震災を経験した身として、もし次に何かあったら、僕たちの世代が誰かの役に立つ番なんです」

災害や防災の知識を魅力的に組み込んだ授業

平成28年4月、多賀城高校に全国で2例目となる防災系の学科「災害科学科」が開設されました。普通科の授業に加え、防災や災害に関する授業を幅広く取り入れているのが特徴で、東北大学の教授を招いた授業や、災害のメカニズムを学ぶ実習など、科学的な視点から防災・減災を考える教育が行われています。

浦戸諸島(塩釜市)へ野外実習に。タブレット端末とアプリを駆使し、植物の生態や地質を調査します。

おもしろい授業は?との問いには、2人とも「くらしと安全」と声をそろえます。「くらしと安全」は、家庭科と保健を組み合わせた授業をベースに、災害時にも使える暮らしの知恵なども学ぶ授業です。

「調理実習では、電気やガスがない災害時にどうやってごはんを作るか勉強しました」「洗濯機がないとき、どうやればきれいに洗濯できるかなど、知っておけば役に立ちそうなことを学べます」とイキイキ説明してくれます。 学んだことはどんどん話し、伝えたい 「めったにできない経験がたくさんできる」というのも2人の共通意見。佐藤さんは「『つくば研修』がすごくおもしろかった。茨城県のJAXAに行って、衛星を使った地形の解析について勉強してきました」と目を輝かせます。

一方、渡邉さんが印象に残っているのは、被災体験を聞く授業だとか。「お腹に赤ちゃんがいるときに震災を経験した方の話を聞きました。津波にのまれそうになりながらも、この子のためにも生きないといけないと、一生懸命逃げたそうです。中学までは、誰かの体験談を聞くことがほとんどなかったので…。こういう機会に恵まれて、有り難いなと思います」。

学校には立体的な地形図や3Dの海底図もあり、学んだことを目で見て確かめられるようになっています。

家族や友達に学校の授業のことを話すと、熱心に聞いてくれる人が多いと言います。「災害科学科で学んだことを、私たちが伝えていければいいなと思います。これから、震災を経験したことがない子どもたちも増えてきます。実際に経験したことや学んだことを、教えてあげたいなと思います」と渡邉さん。
佐藤さんは「ぼくは震災のとき、近所の人に『家族と連絡を取る手段がなかったら、紙に書いて玄関に貼っておけばいいよ』と教わって、すごく助けられました。そういう簡単な知識も、知っている人が言わなければ、知らない人には伝わらない。被害を受けた地域に生まれて、こういう高校で学べるのは、やはり貴重な経験なんだと思います。だからこそ、地震や防災の知識を身につけ、意識を高めていきたいと思います」。

東日本大震災の津波の跡と約1000年前の貞観津波の跡を、生徒たちが歩いて回り、作成した「多賀城津波伝承まち歩きMAP」。

2人は1年生。将来、どんな職業を選ぶかは、まだ分かりませんが、次世代の防災を担う人材として、力強い一歩を踏み出していました。

宮城県多賀城高等学校災害科学科 1年
佐藤 岳さん
多賀城市生まれ、多賀城市立東豊中学校出身。

渡邉 怜那
七ヶ浜町生まれ、七ヶ浜町立七ヶ浜中学校出身。