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宮城県
復興取材レポート

シンガーソングライター畠山美由紀さんとかけがえのない故郷へ。

「ヴァンガード」にて、現マスター今川富保さん(左)と、小松和雄さん(右)。小松さんは現役のジャズドラマー。

復活を遂げた直売所と整備が進む海水浴場。

「わぁ、懐かしい!」。

気仙沼の旅は、シンガーソングライター畠山美由紀さんの歓声から始まりました。

「大谷海岸に来るのは、子どもの時、夏休みの一大イベントだったんです。震災前は松林があって、ハマナスの花も咲いていて。思い出すなぁ」。

畠山さんは気仙沼市の出身。
上京するまでの18年、気仙沼の海を見て育ちました。

畠山さんの実家は山側にあり、津波の被害は免れたものの、震災後1週間も連絡が取れなかったと言います。

「震災後、初めて気仙沼に行けたのは4月のことでした。見慣れた街の面影がどこにもなくて。どこまでもガレキの山が続いていました。あの時は実感がなかったです。7年たって、今のほうが、泣けますね。懐かしい景色は、もう失われてしまったんだなぁって」。

大谷海岸は、気仙沼市民の海水浴場として親しまれてきた場所です。
海水浴場はまだ再開していませんが、道の駅大谷海岸の直売所は、震災から1カ月半でいち早く復活を遂げました。

道の駅大谷海岸の直売所には、売店のほか、地場産品が味わえる食堂もあります。

道の駅の駅長小野寺正道さんはこう話します。
「当時は、買い物するところがなかったので、少しでも早く始めないと、と。残った骨組みにトタンを打ち付けて、レジもなかったので手計算で、販売を始めました」。
「4月と言えば、まだ打ち上げられた船があちこちに残っていたころですよね」と畠山さん。

従業員の努力と街の人の応援のおかげで、震災から2年後の4月に道の駅は今の建物で再オープンしました。

道の駅大谷海岸にて
「これは今も食卓に欠かさないの」「この魚、知らなかった!」と買い物が止まらない畠山さん。

大谷海岸の海水浴場は2021年の再開に向けて、現在整備が進められています。
「海岸の整備については、住民が、こういう海岸にしたい!という青写真を提案して実現したんです。震災前と同じ規模の砂浜を残せるようになったので、前のようにたくさんの人が来てくれたらいいですね」と小野寺さん。

深くうなずきながら話を聞く畠山さん。
「かつてのままの景色はもう見られないかもしれないけど、ふるさとが残るのはうれしいな」。

思い出の喫茶店も新たなスポットも。

次に訪れたのは、畠山さんの原点ともいえるジャズ喫茶「ヴァンガード」。
グランドピアノとこだわりの音響装置が存在感を示す、昔ながらのレトロな喫茶店です。

「この近くの人は、みんな通った記憶があるんじゃないかな。高校生の時も、ちょっと背伸びした気分で通って、ナポリタンを食べながら音楽を聴いていました。高校の先生も常連で、マスターと私の噂をしていたみたい。すごく目にかけてくださって、上京してからも何回かライブをさせていただきました」。

1967年にオープンしたヴァンガードは、津波が天井まで入ったものの、店主と常連客が力を合わせて修理して再オープン。
初代のマスターは昨年他界してしまいましたが、今は常連客だった今川富保さん、小松和雄さんら数名が看板を守っています。

「場所ひとつとっても、いろいろなストーリーがあるんですよね」と畠山さん。
「ここに通っていた高校時代は、早く東京に出たいとばかり思っていました。でもやっぱり、歌をつくる時に思い出されるのは、気仙沼の景色なんです。今は、帰ってくるために、ここを出たのかなと思っています」。

復興していく気仙沼を見て、畠山さんが感じたのは「気仙沼にこんな想いがある人がたくさんいたんだ!」「こんなにいい場所ができたんだ!」ということ。

そんな新たな発見のひとつが「サメ関連SHOPシャークス」でした。

気仙沼はサメの水揚げ日本一。
丈夫で風合いもいいサメの革を使って新たな気仙沼名物をつくりたい、と熊谷牧子さんが震災後スタートしたショップです。

「シャークス」にて
ラメカラーのサメ革製品も。サメ革はなめしに時間がかかり、特殊な技術が必要なため、希少価値が高いそう。

畠山さんを見ると「お久しぶりですー!」と親し気に声をあげる熊谷さん。

「ヴァンガードでライブをした時に、楽屋としてスペースをお借りしたのが移転前のシャークスでした。こんなにおしゃれなショップがあるんだ!とびっくりして、それからはよく通っています」と畠山さん。

「シャークス」は気仙沼内湾地区に完成した「迎(ムカエル)」にあります。
店舗をシェアしている「カフェRST」、メンズセレクトショップ「Lander Blue」のスタッフと一緒に。

「昔からのものも、新しいものも、ここには自慢のものがたくさんあるんです。私の思い出も、復興に向けて新しく歩んでいる人や景色も、どちらもかけがえのないもの。大切にしていきたいし、それぞれの魅力をたくさん発信していきたいな、と思っています」。
(文責・沼田佐和子)


畠山 美由紀
シンガーソングライター。気仙沼市出身。みなと気仙沼大使、みやぎ絆大使。1991年に上京して音楽活動を続け、2001年にソロデビュー。東日本大震災後に自身の作詞作曲による「わが美しき故郷よ」を発表、大きな反響を呼ぶ。復興支援ソング「花は咲く」にも参加。