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宮城県
復興取材レポート

できる角度で、ずっと手助けしたい。ロバート馬場さんと8年目の仙台市へ。

東北学院大学災害ボランティアステーションのみなさんと

仙台市民の生活を守った知られざる職員のエピソード

5月は杜の都・仙台が最も輝く季節。
新緑を車窓から眺めつつ、お笑いトリオ「ロバート」の馬場裕之さんと仙台市の沿岸部に向かいました。

馬場さんは2016年から「農業で住みます芸人in仙台」の若手とともに、仙台市太白区坪沼地区で農地を借り受け「ロバート馬場農園」を開いています。
宮城に何度も通うようになったものの、沿岸部には足を運んでいなかったといいます。

「被災地には震災の1年後くらいに訪れて、子どもたちに向けたお笑いライブをしました。今どんなふうになっているのか気になっています」。

はじめに訪れたのは、「南蒲生浄化センター」。
仙台市内の汚水の約7割を処理する施設ですが、津波で壊滅的な被害を受けました。

南蒲生浄化センターでは、震災からの復興を紹介する映像を放映しています。施設見学も可能。

「職員全員で屋上に避難しました。何度も津波が押し寄せて怖かった。第2波が一番高かった」と話すのは、40年間勤務している菅野清司さん。
寒い夜を過ごし、朝になって最初にしたことは、海に続く下水の水門を手動で開けることでした。

「阪神淡路大震災の時、現地の下水処理が機能停止し、復旧までに時間がかかったことを覚えていたので、一刻も早く水門を開けようと考えました。そうしなければ、汚水が市内にあふれてしまうからです。まだ大津波警報が出ていたので、地震が起きたらすぐ逃げると決め、重い水門を少しずつ、何時間もかけて手動で回し続けました」。と、菅野さんは水門のそばまで案内してくれました。

目の前は海。建物は窓が割れ、水圧で壁は大きくゆがんでいます。
当時の様子を残す建物を見上げ、馬場さんは感慨深い様子。

南蒲生浄化センターの第三ポンプ場で「2012年に来た時に見た景色が、まだ残っているんだと驚きました。こういうの、知るべきですね」と馬場さん。

浄化センターは通常5年かかる工事を3年で終わらせ、新しい処理場を完成させました。
「私たちの責任は海に対してもあるんです」と菅野さん。
「だから汚水を海に流すのは苦渋の選択でした。でも、皆が尽力して短期間で復旧できました」と話します。

「東京にいると、3.11以外の日は、ああ震災、あったね、という感じ。でも、あの時のことを伝える人がいて、傷跡がまだ残っている。菅野さんたちが成し遂げたことって、初めて知ったけど重要なことですよね。実際に見られてよかったです」。
そう馬場さんは語りました。

若者が行くと地域はもっと元気になる。

一行は海から山へ。開園3年目を迎える「ロバート馬場農園」に向かいました。
現地では坪沼地区に住む後輩芸人がお出迎え。

ロバート馬場農園のみなさん 「坪沼の米はほんとにうまい!みんな食べて!」と口々に話します。

「植えてほしい種、持って来たんだ」と荷物を探す馬場さんに「急だな!」「今度はなんですか!」と軽快なツッコミ。
「田んぼでプロレスしたり、皆で田植えしたり、地域の人たちと仲良くなれるのが楽しいです。若い人が少ないこともあって、息子みたいに良くしてくれるし。来てくれてよかったって言ってもらえるのが、とてもうれしい」。

最後に訪れたのは、震災直後から活動を続けている「東北学院大学」の災害ボランティアステーション。
大学2~3年生の学生さん3人に話を聞きました。
公営住宅で交流会をしたり、お年寄りが多い地域で草むしりをしたり。漁師の仕事を手伝ったことも。7年が経ち、支援の方法は変わってきていると言います。

「被災地はどこに行っても人手不足です。『来てくれてうれしい』『学生さんが来ると活気が出る』と言ってもらえます。私たちがやっているのは復興に関するボランティア活動ですが、もし震災がなくても、こういう活動が必要だったんだと気づきました」と。震災の時は小学生だったという学生さんの一人はそう話します。

「ボランティア活動を通じて、地域に対する気持ちが変わった」という学生さんも。
「普段は見えない人たちの生活を知ることができ、今後も地域を活性化できるような取り組みをしていきたいと思うようになりました」。

東北学院大学にて、馬場さんに「震災の時は小・中学生だったけど、もっと下の世代は、震災への興味自体薄れてる。自分が被災地で気づいたことを伝えたいです」と話す学生さんたち。

馬場さんは「偉いなあ」と感心した様子。
 「学生さんでも県外の人でも、できることってある。僕も農園を始めて宮城の食材がおいしいことに気づいたから、それをいろんなメディアで話したいですし、住みます芸人にも地域を盛り上げてほしい。できることでいいと思うんです。できる角度から笑顔をサポートしたいです」。丁寧に言葉を探す馬場さん。

最後に「僕は、そうですね、お笑い、ではなく、料理で、盛り上げたいですかね」といたずらっ子のように話してくれました。
 (文責・沼田佐和子)

馬場 裕之
1979年、福岡県北九州市出身。お笑いトリオ「ロバート」のメンバー。料理愛好家としても知られ、2013年にはレシピ本『ロバート馬場ちゃんの毎日毎日おいしい本』を出版した。宮城のテレビ番組では料理コーナーを担当している。