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復興取材レポート

これは自分が伝えなければ、と。仙台中央タクシー 菊地正男さん

案内をする菊地さん。会社の研修会などで利用する人も多いそう。

1回の乗車時間はおよそ2.5時間。仙台駅を起点に沿岸部へ。荒浜や名取市を案内するのが通常ルートで、ときには南三陸町や気仙沼市まで車を走らせることもあるそうです。

「いろいろな人を乗せます。親子で訪れる人もいます。子どもさんは、特に何も話しませんが、真剣な表情で聞いていきますね。何か感じるところがあるのでしょう」。

仙台中央タクシーで語り部として勤務する菊地正男さんは、ドライバー歴40年以上。
もともと、人に何かを話すのは苦手だったそうです。

「この歳になって語り部をするとは思っていませんでした。でも、自分の家が流されて、避難所でいろいろな経験をして、これは自分がしゃべらないといけないな、と。それで、語り部に立候補したんです」。

数字や情報だけではなく実感してもらうための語りを

震災の前、菊地さんの家は岩沼市玉浦地区にありました。町内会にも積極的に関わり、当時は役員をしていたそうです。

「妻と娘を小学校に避難させた際、集まっている人の顔ぶれを見たら、まだ来てない人がいたので、町内に戻って呼びかけました。何軒目かの家を出て、ふと海のほうをみたら、津波がひたひた来ているのが見えました」。

菊地さんは急いで車に乗り、避難所に向かいます。
1kmほど走ったところで振り返ると、町内はすでに黒い水の中だったそうです。
家は2階部分まで浸水し、1階部分は大破。住み慣れた街は見る影もない状態でした。

菊地さんはタクシーに乗った人に、その時見た風景をありのまま伝えていきたいと考えています。
「もちろんがれきは撤去されましたし、かさ上げ工事や公園を整備しているところもあります。自分は見ているから分かりますが、初めて来た人はピンとこないと思うんです」。

語り部タクシーとして運行するクルマには、目印のステッカーが。

分かりやすく説明するため、菊地さんは震災前と震災直後の航空写真を使っています。

「荒浜だったら、震災前は森みたいな松林があって、こんなに住宅があったんですよ、と見せる。そのあと、震災直後の写真を見せる。それから今の風景を見てもらう。何メートルの津波が来て、何人が亡くなって、という説明だけにこだわらず、どういう街だったかということを説明するようにしています」。

避難の方法やその後の生活も紹介していきたい。

菊地さんが工夫していることは、もうひとつあります。避難の方法や、避難所での生活を語ることです。

菊地さんは、被災した後、数か月避難所で生活し、その後仮設住宅に入りました。
「避難所はトイレの管理が一番大変だった、とか、集団生活になじめる人となじめない人がいた、など。自分は、避難所の運営や移転の会議にもずっと関わっていたので、そういうところで見たことも伝えたい。それから、重要なのは、避難方法ですね。どこの街に行っても、ここではどういうふうに避難して、何が成功で、何が失敗だったかということを話すようにしています。新しくできた避難タワーや、高速道路に設置されている避難ステップを見せることもありますね」。

語り部タクシーの運転手に向けた講習を行い、最新の情報も共有します。

語り部タクシーを利用する人は年々減少しています。
当初は毎日のように利用される方がいましたが、現在私がご案内するのは月2、3回程度です。
「災害はいつどこで起きるか分からない。来た人が自分の地域に帰ったとき、役に立つような話をしたい。自分も歳なので、いつまで続けられるか分からないですが、やれるだけ続けたいと思っています」。

仙台中央タクシー株式会社 業務二課
菊地正男さん

40年以上タクシーを運転するベテラン。観光タクシーの運転手としても勤務していた。仙台中央タクシーの語り部タクシーは4人乗り小型タクシーで2.5時間14,000円(税別)〜。人数に合わせて、ジャンボタクシーやマイクロバス等利用可能。訪問場所や時間など、詳細は相談を。