みやぎ復興情報ポータルサイト
宮城県
復興取材レポート

【NOW IS復興インタビュー】雄勝町伊達の黒船太鼓保存会 神山正行さん、四倉由公彦さん

今回は石巻市雄勝町で伝統郷土芸能を伝えている「雄勝町伊達の黒船太鼓保存会」の会長・神山正行さん、事務局・四倉由公彦さんのお話を紹介します。

伊達の黒船太鼓の誕生から現在に至るまでのエピソードなどお伺いしてきました。

伊達の黒船太鼓の誕生
伊達の黒船太鼓は、サンファンバウティスタ号の建造地が雄勝町である説から生まれた和太鼓の演目。
サンファンバウティスタ号は、約400年前、現在の石巻市月浦港から出帆し、世界との外交を目指した慶長遣欧使節船のことです。
伊達の黒船太鼓では、その船を先導していた支倉常長がどのようにスペインへ渡航したのかを演奏で表現しています。

雄勝町の町制50周年記念事業として団体が発足し、当初は行政主導で活動していましたが、石巻市合併の際に民間の団体となりました。
現会長の神山さんも発足当初からのメンバーで、副会長として運営を支えていました。

津波で流されて
震災の時、雄勝町には20m以上の津波が押し寄せ、
保存会の練習場であり、衣装や楽器の保管場所でもあった公民館も流出しました。

「僕、当時は黒船太鼓のいちファンだったんです。それで、神山さんに『太鼓は続けるよね』と聞いたら『俺はできない、今できる訳がない。落ち着いたら誰かがやるでしょ。』の一点張り。何もなくなってしまって、太鼓どころじゃないのは確かだったんです。震災のあった年の4、5月ころはたしかに「太鼓の音など大きな音が地震を想起させる」と自粛ムードが流れていました。」と、四倉さん。
「一回文化が途絶えたら、なかなか修復できないよ」と何度も説得しようとしたのですが、神山さんは断り続けていたそうです。

ちょうどその頃、四倉さんのTwitterのフォロワーで、静岡県伊東市に住む大川光浩さんという方が突然支援物資を持って四倉さんの自宅を訪れました。
「ツイッター見ていました。これ、支援物資です」。
支援物資と名刺を頂き、静岡県に帰ったあとも、ツイッターやメール、電話で連絡を取り合うようになりました。

静岡県の“黒船”
あるとき大川さんは「何かたりないものはないか」と声をかけてくれました。
四倉さんは「昔から応援している和太鼓の団体が無くなりそうで…」と大川さんに相談。
そこで大川さんは「伊東市の祭りに出てみないか」と提案してくれました。

静岡県伊東市にも、雄勝町のサンファンバウティスタ号のような徳川の命でスペインに渡航した”黒船(サンブエナベントゥラ号)”があり、毎年8月にそれを讃える”按針祭”(あんじんさい)が行われています。
そこでは、関東の太鼓チームがそろう太鼓合戦も行われ、「そこに参加してみないか」と招待してくれました。

しかし、四倉さんがすすめても神山さんは「行かない」と断り続けました。

中学生への太鼓の指導にはあたっていたのですが、
保存会の活動の再開はがんとしてやっていなかった神山さん。
衣装も何もかも流されて、何もできるはずがない、と強く思っていたそうです。

「でも静岡から大川さんが石巻市まで直々に交渉に来てくれ、その心意気に触れ、伊東市に行かなくては、という気持ちになったんです」と神山さんは言います。

結果的に、保存会のメンバーはじめ、雄勝中学校の生徒や商店街の人々など総勢約50人が伊東市に招待されました。
そして、演奏を披露。
気持ちのこもった演奏は、今でも超えることが難しいくらい良いものとなり、大成功を納めました。

その後も様々な祭りや活動に呼ばれることが増え、東京のチャリティーイベントなどにも呼んでもらえるようになりました。

また、震災のあった年の秋には、デザイナーのコシノジュンコさんの耳に黒船太鼓の話が入り、衣装のデザインをしてもらうことも決定。
周りの人の支援を受けながら、伊達の黒船太鼓保存会は徐々に復興を遂げたのです。

画像出典:https://kurofunedaiko.blogspot.jp/2012/09/blog-post_3154.html

2012年には、四倉さんも正式にメンバーとして加入し、打ち手としてだけではなく、事務局として公演のブッキングや資料・楽譜(口唱歌譜)の整理などに携わっています。
今では、大川さんもメンバーに加わり、静岡県から会を支えています。

伝統郷土芸能を残していく
雄勝町伊達の黒船太鼓保存会では、雄勝の伝統郷土芸能を残していきたいという想いから伊達の黒船太鼓の演奏・伝承のほか、獅子舞の演目保存補助活動も行っています。

室町時代から続く「雄勝法印神楽」演目の一つ「獅子」は、雄勝町内の各地区で保存していますが、後継者不足に悩まされています。

最近は、保存会のメンバーが雄勝町内の獅子舞保存会にも入り、祭囃子、獅子囃子を覚え、囃子手として祭りに参加したり、神輿や獅子舞が出るお祭りへ出向き、手伝いや記録映像を撮影する活動を始めました。

「伊達の黒船太鼓のルーツに当たる雄勝の伝統郷土芸能、神楽や獅子舞などに携わることで黒船太鼓の演奏にも深みを増せると確信したんですよ」と神山さん。

「伝統郷土芸能の映像データをDVDに起こしたり、各地区の祭りを見に行ったりしているうちに伝統郷土芸能マニアになっていました」と四倉さんは笑います。
四倉さんは「様々な人達にこういう郷土芸能を見てもらい、自分の地区に興味を持ってもらえたらいいなと思います。黒船太鼓もクオリティを高めて保存して、後継者を育成したいですね。高台や復興公営住宅ができ、地域の復興も進んでいるので”今”の地域のあり方に沿った活動を模索していきたいです。雄勝も頑張っています、ということを伝えていけたら」と話します。

伝統を大切にしていく、続けていくということを大切にしながら活動に励む神山さんと四倉さん。
今日も元気に太鼓の音を響かせています。

(左)神山正行
1967年生まれ。石巻市雄勝町出身。「神山商店」を営む。「雄勝町伊達の黒船太鼓保存会」会長。
(右)四倉由公彦
1983年生まれ。石巻市千石町出身。宮城県を拠点に活動する音楽家。「雄勝町伊達の黒船太鼓保存会」メンバー。

 

執筆 ライター 昆野沙耶