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復興取材レポート

【NOW IS復興インタビュー】牡鹿半島食堂いぶき 堀越千世さん

今回は、牡鹿半島食堂いぶきを営む一般社団法人OPEN JAPAN副代表の堀越千世さんにお話をお伺いしました。
津波が押し寄せた地域にあった古民家を再生し、「牡鹿半島食堂いぶき」のオープンに至るまでのいきさつや道のり、現在の様子をお伝えいたします。

みんなが集まる食堂
石巻市牡鹿半島・大原浜地区にはもともと、約80世帯の家々が並んでいました。

しかし、およそ8mの津波が押し寄せたため、ほとんどの建物がなくなってしまいました。
そこに、牡鹿半島食堂いぶきはあります。

外観は古民家そのものという印象で、一見、食堂には見えない風貌です。
中に入るとレトロモダンで、木の温かみが気持ちの良い空間が広がっていました。


名物は「牡蠣ハンバーグ(1280円)」と「超ホタテ丼(1650円)」。
養殖がさかんな牡蠣と、年中扱えるホタテを使った料理です。
地元の人には鯨の竜田揚げや各種揚げ物も人気だそうです。

「このあたりでは、飲食店自体が少ないので、ふらっと立ち寄ってくれる人が多いんです。20時まで営業しているので夕飯がわりに一杯という人もいます。
また、コミュニティスペースとしても利用してくれる方もいて、理想の使われ方をしていますね。」と堀越さん。

古民家のあたたかい空間の中、観光客も地元の人も楽しめる場になっていました。

大事なものを取り壊さないで
堀越さんは震災後、ボランティア団体・一般社団法人OPEN JAPANの一員として石巻市を訪れていました。

そこで、この一軒の古民家に偶然出会います。
津波で浸水してしまい、ぼろぼろにはなっていたものの、
「ここで取り壊してしまうにはもったいない」
と感じたOPEN JAPANのメンバー。

平成23年の春、OPEN JAPANの理事の吉村さんは、新潟県中越地震の際、古民家再生に携わった経験もあり、この古民家も再生することを発案しました。

床や建具は新しいものに変えなくてはなりませんでしたが、柱は奇跡的にがれきなどにぶつからず綺麗に残っていたのでそのまま利用することができました。

平成23年の夏には、愛媛県・松山で飲食店を経営する神野さんが
「被災地で人の集まるレストランをつくりたい」というアイディアを持ち込み、
牡鹿半島食堂いぶきの元となる姿が生まれたのです。

がれきの撤去や整理などを一通り終えたのち、
平成25年3月に地鎮式が執り行われて本格的な工事が始まりました。

プロジェクトは寄付金で賄っていて、資金を使い切っては休止の繰り返しだったため、
進行はスローペースになっていましたが、長い月日をかけて、ついに平成29年4月22日オープンに漕ぎ着けました。

なかなか完成しないことに「本当にできあがるのか?」と不安がっていた地元の人たちも、
オープンしてからは「いい店ができたんだ」と、
家族や他所の人を連れて来てくれるようにまでなりました。

食堂の現在とこれから

「お食事はもちろん、内装にも注目してください。扉や壁は廃材を利用して組んでいるものがほとんど。それと、床に使っている素材は天然で、化学物質を使っていないんです。赤ちゃんが舐めてしまっても大丈夫なんですよ」。

堀越さんは店の中を歩いて説明してくれました。

「あれを見てください。あの天井の模様の高さまで津波は到達したんです。説明できるように形に残しておきたいと思って、左官屋さんに頼んでグラデーションの模様のようになるよう加工していただいたんです」。

ほとんどが新しくリノベーションされているように見えますが、
津波が押し寄せた跡が、自然な模様となって残されています。

堀越さんに今後について伺いました。
「やはり、コミュニティスペースとしてももっと利用して欲しい気持ちがあるので、
ワークショップやイベントも秋冬頃から開催できればと考えています。
半島の中の人も外の人も受け入れていけるスペースになればいいですね」
と笑顔で答えてくれました。

すべてをこだわり抜いた牡鹿半島食堂いぶきの想いと自慢の料理、空間は格別です。
訪れた際には、ぜひとも全身で復興の力を感じてみてください。

 


堀越千世
震災前は東京都の会社に勤務。震災を機にボランティアで石巻市を訪れるようになり、震災から約2ヶ月後に大原浜へ拠点を移す。前職をやめたのち、大原浜の住民へ。
一般社団法人OPENJAPANの副代表となり、
平成29年7月には牡鹿半島食堂いぶきをオープン。

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牡鹿半島食堂いぶき
宮城県石巻市 大原浜字町18-1
0225-25-7282

11:30~20:00(火~金) 11:00~20:00(土) 11:00~16:00(日)
定休日 月曜日

牡鹿半島・大原浜に位置する牡鹿半島食堂いぶき。
築80年以上の古民家を再生して誕生。
地元の食材をふんだんに使った料理は観光客にも地元の方からも大好評。
お食事のほか、廃材を利用した内装や牡鹿半島食堂いぶきの支援を行うアウトドア・フットウェアブランド「KEEN」のアウトレット常設ストアにも注目。

執筆 ライター 昆野沙耶