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復興取材レポート

【NOW IS復興インタビュー】アグリードなるせ 安部俊郎さん(第2回)

津波による塩害を乗り越え、見事その年の稲作を成功させた農業生産法人「アグリードなるせ」と地域のみなさん。
今回は農業生産法人「アグリードなるせ」社長である安部俊郎さんの震災後についてご紹介します。(第1回はこちら

バウムクーヘンの輪

震災の年に、見事稲作を復活させた農業生産法人「アグリードなるせ」。
その後、対応すべき課題は、被災者の「継続的な仕事」でした。

そこで誕生したのが、「NOBICO(のびこ)」という名称の農産物処理加工施設。
各種小麦の製粉やお米の精米、無洗米製造、米粉製造・製粉・バウムクーヘンの製造を行っています。

「なぜバウムクーヘンの製造なの? と聞かれるのですが、これもまた不思議なめぐりあわせ。東京で行われた食の祭典のイベントに足を運んだ際、神戸の企業の方と意気投合したんです。震災の話をしているうちに、“小麦を作っているなら、それを利用してみたら?”という話題になり、バウムクーヘンの機械を見せてもらったことがきっかけになりました」と、安部さん。

いい素材を使えばいいものが作れるだろうと確信した安部さんは、バウムクーヘン作りを始めました。

最初は、菓子の製造経験のあるスタッフがいなかったため、神戸に赴いてバウムクーヘンの製造を学ぶところからスタートしました。
ただ、その時は方法を教わっただけだったので、最初は失敗の繰り返しでしたが、徐々に、綺麗でおいしいバウムクーヘンを焼けるようになりました。

自家製の米粉や小麦粉、新鮮な卵を使ったもっちりしっとりきめ細やかな味わいのバウムクーヘンは、いまではすっかり東松島市の名物となりました。

さらに、バームクーヘン作りは、環境に配慮した循環型農業の形態を取っています。

自分たちで作った餌(トウモロコシ)をニワトリにやり、産んだ卵を使ってバウムクーヘンを作り、ニワトリのふんを堆肥として土に返す…というように、グルグルと木の年輪のようにつながっています。

地域と一体になって
平成29年6月5日、『~JR東日本「のもの」アワード2017授賞式~』が行われました。

「のものアワード」とはJR東日本が平成21年から推進してきた「地域再発見プロジェクト」の一環で、生産者や6次化産業加工者などを対象に、より優れたものづくりに対して与えられる賞です。

その栄えあるアワードで農業生産法人「アグリードなるせ」が作った大豆を使用し、「JR東日本グループ」、「宮城県農林水産部」、地元企業である「株式会社菓匠三全」とで共同開発した「きなこおかき」「きなこクランチ」などの「仙台きなこシリーズ」が大賞を受賞したのです。

安部さんは「この経験を通して、地域と連携ができることを確信しました。地域を大切にするという意味では、今では子どもとのかかわりも重視しています。地元の小学生たちとさつまいもの収穫や生態系調査なども行っているんですよ」。

今後の取り組みについて
「より多くの方に私たちのつくったものを食べてもらいたいし、“ここでしかできないもの”という、こだわりのものづくりを進めていきたいです。構想はうんといろいろあるんです(笑)。でも、あんまり欲張らず、まずは一歩ずつやっていけたらと思います」。

高齢者向けのデイサービスも経営し、雇用創出はもちろん、年配の方々の生きがいとなるようなコミュニケーションの場所作りを行っています。

さまざまなことに精力的に挑戦している安部さん。
今後のチャレンジからも目が離せません。

 

 


安部俊郎
昭和32年、宮城県生まれ。宮城県立農業講習所卒業後、いしのまき農協(旧野蒜農協)営農指導員として入組。退職後の平成18年、「有限会社アグリードなるせ」を設立し、代表取締役社長に就任。東日本大震災で自社も壊滅的な被害を受けるも、消防団の副分団長として現場で人命救助や行方不明者の捜索などにあたる。また、耕地の除塩に成功し、その年の秋には高品質な米の収穫も実現。現在、東松島市野蒜地区で、6次産業化施設の運営、人材育成や雇用促進など地域農村コミュニティの発展に努めている。

 

執筆 ライター 昆野沙耶