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復興取材レポート

【宮城発!元気と食の最新情報】地域の食文化である「糀」を親子で未来へとつなぐ

「麹菌」を扱うことによって生まれる、味噌、醤油などの日本伝統の発酵食品、「麹菌」は、生産者にとって宝でもあり命です。

明治42年創業、今日に至るまで108年間、看板を守り続けてきた島津麹店。
北上川流域で生産した米を麹にして仕込み味噌をつくった事がお店の始まりと言われています。

東日本大震災では、店舗や工場などが津波により甚大な被害を受けました。
明治時代から受け継いできた木樽などの麹製造に使う道具も腐って使えなくなり、先代は1年間の休業状態に追い込まれました。

先代が経営再建を断念しようとあきらめかけた時、伝統を継承すべく立ち上がったのが佐藤さん親子でした。
島津麹店の娘婿であり、現在、事業統括を務める父の佐藤憲光さんは、女川町で登記・測量事務所の経営をする傍ら、休日は麹店を手伝っていたこともあり、麹製造の知識や経験を持っていました。

「石巻地域唯一の麹店である島津麹店の麹は、100年以上も続いてきた“地域の大切な食文化”です。この食文化を震災で途絶させるわけにはいかないという必死の想いでした。」

6代目を継承した息子の佐藤光弘さんは、震災当時は福島県郡山市でサラリーマンとして働いていました。
店舗や工場などの掃除や片付けを手伝ううちに、先代の後を引き継ぐ決意を固めっていったそうです。

「島津麹店の麹は、自分が子供の頃から接してきた地域の大事な味です。日本が世界に誇れる麹文化の継承を父と一緒に続けていこうと決意して石巻に戻ってきました。」

左)島津麹店事業統括 佐藤憲光さん   右)島津麹店6代目 佐藤光弘さん

事業を再開するにあたり、最初に直面したのが「麹菌」の問題でした。

「麹菌」は、気温や湿度、天候など環境の影響を受けて、時間をかけてゆっくりと変化してゆき、それぞれの地域の生産者特有のものとなっていきます。
被災した工場に「麹菌」はまだ住み着いていてくれているのか?変化してしまっていないか?事業継承を決めたものの、それが憲光さんの胸にはずっと不安として引っかかっていました。

そんな時に吉報が入ります。島津麹店の種菌があると種麹屋さんから連絡が入ったのです。「種菌が別の場所に保管されていたと聞き飛び上がるほど喜びました。種菌があるならば事業を再開できるかもしれない!」

佐藤さん親子は種菌を譲り受け、宮城大学のアドバイスや協力を受けながら、100年続く島津麹店の「麹菌」の培養や生麹の生産を2012年の4月から開始します。

生麹の生産でも困難が待ち受けていました。
思った通りの味に仕上がらないのです。
原因は、周囲の被災家屋の解体工事の粉塵などによるもので、当時の被災地の状況では避けられない問題でした。

試行錯誤を繰り返すこと3年。
佐藤さん親子は、納得のゆくササニシキ100パーセントの生麹を完成させます。
また仙台市産業振興事業団のハンズオン支援を受けながら、画期的な商品を世にリリースします。

その商品が「華糀」です。

「華糀」は、高温で加熱処理する普通の甘酒とは異なり、低温加熱で麹菌が生きたままの状態で入っている糀飲料。
あっさりと優しい甘みが特徴的で、無添化、ノンアルコールなので、子供から高齢の方まで安心して食べる事ができます。

さらには「華糀」はジャンルを選ばず、料理の調味料としても大活躍してくれます。
今年の6月に仙台で開催された食の交流イベント「イキゼンユウゲ」では、この「華糀」と、島津麹店の味噌から生まれた、たまり醤油と生麹を合わせた「紫糀」(しょうゆこうじ)など、島津麹店で生産している商品を使用したイタリアンコースが振舞われ、イベントに集まった食通たちをうならせました。

「麹づくりに関して、本当に父はストイックです。麹の事になると、寝食を忘れて何時間でも研究に没頭します。そんな父の背中を震災以来ずっと見てきました。麹づくりの技術の継承はもちろんですが、私も、日本が誇れる麹の文化の素晴らしさを若い世代へと伝え、日本だけでなく海外にも広げていきたいと考えています!」

震災にも負けず、石巻に根付く郷土の食文化「麹」と共に、未来と世界を見据えながら親子鷹の挑戦はこれからも続きます。

島津麹店
http://www.simazu-kouji.com/

 

執筆者PROFILE
一般社団法人IKI ZEN 佐藤大樹

食を中心に、宮城県の中小企業生産者の6次産業化や農商工連携・地域ブランディング等の支援を行うことを目的とし、平成27年4月に設立された一般社団法人。管理栄養士・6次産業化プランナーである代表理事を中心に、クリエィティブディレクターの理事らとブランディング・商品開発・販路拡大支援を行っている。

https://www.facebook.com/ikizenproject/